きみが春なら

Side.D

── 尾けられている、と思った。

蒸し暑く、日も長くなってきた初夏の夕暮れ時。背後の気配にはすぐに感付いたが、いかんせん理由が思い当たらない。
最近は派手な悪さもしていない。アーサー亡き今、ペテルブルクも幾らか平和になった。
用心のため路地裏を避けながら帰路に着く。そのうち陽は完全に沈み、背後からの足音も無くなった。

安心していつもの横道に入ったと同時。
背中に、何か突きつけられた。

「バン!」

ひやりとしたのは
一瞬だった。


「一年半、か。思ったより長かったな」


振り向かずに笑った。
安堵の気持ちが胸に広がる。


……良かったなぁ、
お嬢さん?

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