†鑑査委員制度†

仲間?



教室へ続く階段を上る。右手をポケットに入れ、ひんやりとした鍵の感触に今日一日を思い返す。


自然とため息が出た。


起きた事を一つずつ頭の中で反芻させようとしたが、上手いことまとまらない。


一気にさまざまな記憶が蘇り、ぐちゃぐちゃで、整理して考えられない。そんな自分に酷くうんざりとした。


軽くため息をつき、ひとまず思考を放棄することに努める。


階段を上りきり右に曲がればすぐそこが1年A組である。ドアに手を掛けながら、「お腹が減ったな、早くうちへ帰ろう」などと考えつつ、特に注意せずにドアを引いた。


「やっと帰ってきた」


まさか人がまだ残っているとは思いもしなかったのと、鈴を転がしたような高い声が突然飛び込み、思わずぎょっとした。


見かけたことのない女の子だ。栗色の明るい髪を、人目で人工的に作られたと分かる巻き髪。


強気な印象を与える大きな目は、長い睫毛で縁取られている。


とても美人な子だ。


しかし、教室の真ん中で堂々と誰とも知れず人の机に腰掛け、膝を組んでいるその出で立ちは、俺に瞬時に彼女の個性を決定付ける。


「全く遅いわね。一時間も待ちぼうけを食らったじゃない」


「待っていたって僕を?」


「そうよ。あなた、A組の瀬川透でしょ?」


確か初対面なはずなのにこの遠慮のない言い方。しかしそこには不思議と不快感はなく、彼女の見た目の個性だからこそ許される無礼に思える所が不思議だ。


何ていうかゴージャス?


いや、女王様みたいな子だな・・・
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