花束に囲まれた君が残したもの。
【大人になった僕ら】

ープロローグー

波風が頬を伝う。

7月7日。
沖縄から鹿児島に向かうフェリーの展望で僕は一人、青い海を眺めていた。
首からさげたカメラで1枚、海を映す。

「晴れたな。珍しく…」

そんな一言と共に手すりに置いておいたコーヒー缶を口にする。

このフェリーは何時につくんだっけ。

ポケットからスケジュール帳を手に取り、しおりを頼りにページを開く。
ページを開いた瞬間、風が強く吹き、しおりが吹き飛ばされ、ページは暴れるようにめくれた。

「しまった!」
声に出てしまった。

声と同時に、1人黄色の影が、しおりを追いかけ、風のタイミングを見計らいジャンプしてしおりを捕まえていた。

「捕まえたっと。…ツッキーのしおり、この写真にしてたんだね」

僕のもとにしおりを持って来てくれたのは、幼なじみのヒマ(瞰 向日葵 フカン ヒマワリ)だ。
ヒマワリという名前だけあって、風になびく黄色のワンピースが良く似合うと思った。

「捕らわれてるんだよ、あの夏に。」
僕はつぶやく。

「じゃあ、空になんて飛ばさないで。」

ヒマはそう言って僕の隣に立った。
そして空を見上げて笑顔で言った。

「今日の空はあの頃みたいに輝いてるね。」

"君も捕らわれてるじゃないか"
と言いたかったけどそれを口するのは辞めた。

笑顔を曇らせたくなかった。
せっかく晴れたのだから。
 
僕はもう一度しおりを見た。

ー中学生の夏の思い出ー

このために僕らは鹿児島に戻ってきた。
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