花束に囲まれた君が残したもの。

ー年が変わってー

「おはようございます。年も明けたこともあり、受験内容を本格的に授業に取り入れていきます。気を引き締めて行きましょう。」
 
年が変わり、また学校が始まった。
寒い風が廊下を吹き渡る。
部活も始まり、なんだか慌ただしい雰囲気だった。

みんなも和気あいあいとしており、少し気持ちの整理が着いたように見えた。

ただ1つ、数日経ってもツユちゃんもクワも学校に来ていなかった。
そして2人とも連絡がつかない。

僕とヒマは授業後とりあえず病院に行くことにした。

僕とヒマは年末何したか。
とかそんな話をしながらのんびり病院へ向かう。
 
その話の中でもひとつ驚く話があった。
それはシーちゃんとユリちゃんの関係だ。

僕は全然気づかなかったけれど、ハギの事故の後、ユリちゃんはシーちゃんをすごく攻めて妬んでいたらしい。

(確かに、流星群を見たあの日もそんなことを言っていたような…)
 
そしてそれを見ていたツユちゃんがユリちゃんと同じクラスのヒラに相談した。
そして部活で忙しい中、2人の間に入ってくれてたとか。
 
「そんな様子全くしてなかったのに…」

クリスマスの時、確かにふたりが一緒にクッキーを作ったことに疑問には思った。
でもその裏側にはそんなやり取りがあったのか…

「ヒラ君にツッキーには余計な心配かけたくないから内緒ねって言われてたけど、2人も大分関係良くなってきたし、もう時効かなって思って。」
  
いつも通る川辺にある木々は葉が落ち冬の景色へと変わっていた。


日常を取り戻そうとしているのは僕だけではないんだ。

ヒラもヒマも。

みんな、絡み合った糸を少しづつ解くために考えて、悩んで。動いて。

向き合っている。


病院に着くと受付を済ませて、廊下を歩く。金木犀があった中庭は寂しげな茶色の世界が広がっていた。

ツユちゃんの部屋の前に立つ。
なんだかんだ初めて病室には入るので緊張が走った。

少し気持ちを整えて病室の扉を開けると、夕日の光が揺らぐ部屋にベットがひとつ置かれていた。

そしてそこには眠るツユちゃんの姿があった。
ツユちゃんの姿は変わり、髪は抜け、顔や腕が骨ばっているのがわかった。

「ツユちゃん。」

ヒマがそっと名前を呼ぶと、ツユちゃんは少しづつ目を開けて僕らを見る。

「…来てくれたんだね。」

か細い声で返事をするツユちゃんに僕らは心苦しかったけれど、笑顔を絶やさないように話を続ける。

「もちろんだよ。体調どう?」
僕はそっと問いかける。

「ちょっと悪化しちゃったみたいで…学校行けてなかった。」
ツユちゃんは寂しそうに答えた。

僕らはどう返事していいかわからずただ沈黙としていた。
それを察してツユちゃんはまたか細い声で話す。

「みんなはどう?」
 
「みんな元気だよ。でも…クワだけ来てないんだ。何か知ってる?」

僕が聞くとツユちゃんはびっくりしたような表情をすると同時に焦り始めた。

「実は…クワと…年末病院着のままばったり会っちゃって…説明しようとしたんだけど…なんだかすごく怯えていて…」

そういうとツユちゃんは苦しそうに咳をした。

「無理しないで。」
ヒマがツユちゃんの背中を優しく摩る。
ツユちゃんはゆっくり深呼吸をして息を整えると

「お願いがあるんだけど…」
そう呟いた。

「僕らにできることあればなんでも言って。」

僕は笑顔でツユちゃんに答える。
ツユちゃんには助けて貰ってばかりだ。
ツユちゃんの為ならなんだってやりたい。

「ハギの病室にクワがいなかったら山小屋に行ってほしいの。」
ツユちゃんは真剣な表情で僕たちに言う。

「また…あの頃のように1人泣いてるかもしれない…」
ツユちゃんは寂しそうに呟いた。

「大丈夫。僕らが見つけてくるから。」
僕とヒマは顔を見合せ頷くと笑顔で答えた。

"頼まれた"僕らは少しツユちゃんと話したあと、「また来るね」と言い残し部屋を出た。

部屋の扉を閉めたと同時にヒマが僕の服の袖を掴んだ。

「…ツユちゃん、大丈夫だよね…」

そう言うヒマの顔は涙であふれてくしゃくしゃになっていた。
ツユちゃんの前では我慢していたのだろう。

やせ細ってしまったツユちゃんはまるで別人のようだった。
その姿を痛んだのはもちろんヒマだけではない。

ー僕だって…

僕は泣きそうな気持ちを堪えた。
泣いてたって変わらないんだ。
僕は溢れそうな涙を拭った。
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