第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
「はい」

グッと上体を起こし、扉を開ける。

「お嬢様、お疲れ様です」

「ユウリ」

穏やかに微笑む彼は、戦闘の直後とは思えないほどきっちりしていた。

「紅茶と軽食をご用意しました。
少し召し上がってから休まれた方が良いかと思いまして、レイさんにお願いしました」

テーブルには、湯気の立つリゾットと紅茶。

「ありがとう! ちょうどお腹空いてた」

へらっと笑うと、ユウリは手際よく食器を並べてくれる。

「いただきます」

「ええ、どうぞ」

ふーっと息を吹きかけて——

「あっつ!」

「お気をつけて。お水をどうぞ」

さっと差し出されるグラス。こういうところ、本当に頼りになる。

「美味しい」

ほっと胸がゆるむ。

「なら良かったです」

ユウリの穏やかな笑顔に、心が救われる気がした。

「ご馳走様でした」

一息ついたところで、ユウリが柔らかく言う。

「お嬢様、本当によく頑張りましたね」

その労いに、胸がじんとする。

「うん。でもね、みんなが来てくれなかったら無理だったよ」

「間に合って良かったです」

「もっと、強くなりたい……」

「これ以上強くなるんですか?」

ユウリが目を丸くする。

「……だって、私、強くないもん。
見た目がディランだったから、躊躇したの。
中身はジョルジュだって、わかってたのに」

ぽつりと落とした言葉に、ユウリは一瞬だけ目を伏せた。
その沈黙は責めるためではなく、ただ私の痛みを受け止めるための間だった。


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