第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
「だって、テオあんまり食べないじゃん!
腕も細いし!」

レオがテオの腕をつまんで揺らす。
けれど、実際には細いというより、無駄のない引き締まった腕だ。

「はあ? 食べてるし。
これでも筋肉ついてるし!!」

テオはむっとしながら袖をまくる。
浮き上がった筋が、しなやかな力を秘めているのがわかる。
細いけれど、触れたら硬そうな、いわゆる細マッチョ体型だ。

「全くもう」

ルイが呆れたように笑い、アリスは小さく首を振る。
2人とも、このやり取りに慣れきっている。

「歩けるから大丈夫だよ!
ほら、いこいこ!」

私はゆっくり立ち上がる。
足に少し力が入らなくて、体がふらついた。

「お嬢様、
せめて腕! 腕支えるから!!」

テオがすぐに駆け寄り、私の右腕をそっと取る。
その手は温かくて、思ったよりしっかりしていた。
細いのに、支えられると安心感がある。

「俺も俺も!!」

レオが反対側の腕をつかむ。
こちらは相変わらず勢いが強い。

「ねぇ、これなんか私、囚われた人みたいじゃない?」

「お嬢さん確保ーだ!」

レオが楽しそうに言う。
テオは横で真剣な顔のまま。

「ちょっとさ、俺は本気で心配してるんだけど!!」

テオの声は本気で、胸の奥に響く。
その真面目さが、逆に可笑しくて少し笑ってしまう。

「ねぇー歩きにくいって。」

2人に挟まれたまま、ガヤガヤと歩き出す。
まるで護衛されているみたいで、少し照れくさい。

その後ろからルイとアリスがやれやれという顔でついてくる。
< 193 / 226 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop