第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

そして――王位即位式 当日。

城中が光に包まれていた。
磨かれた大理石の床にシャンデリアの光が反射し、
まるで星空の中に立っているような錯覚すら覚える。

そんな華やかな空間の中央で、私はフルートを手に舞台へ立った。
隣には、ピアノの椅子に腰掛けた兄・マルク。
普段は頼りない兄なのに、鍵盤に指を置く姿は妙に様になっている。

その傍らで――

「俺さー、お嬢さんが楽器弾いてるところって見たことないんだけど」

レオがウェイター姿で飲み物を運びながら、ぽつりと漏らす。

「俺もです。正直、剣を持ってる姿しか想像できなくて……なんか違和感が」

セナが真面目な顔で言う。

「私もよ。びっくりね」

ルイが目を丸くする。

「確かに……でもすごい綺麗。可愛い」

テオはうっとりとした声で言い、
その場の空気が一瞬だけ柔らかくなる。

「まあ、見ていればわかりますよ」
ユウリが穏やかに微笑み、

「お嬢様ですからね」
アリスも頷く。


そして、演奏が始まった。

マルクのピアノが静かに流れ出し、
その上に私のフルートの音がそっと重なる。

音が重なった瞬間、
会場のざわめきがすっと消えた。

煌びやかな光の中で、
音だけがゆっくりと広がっていく。

先ほどまで話していた仲間たちも、
気づけば息を呑んでこちらを見つめていた。

2人の音が会場を包み込むように響き、
その場にいる全員が、
ほんの一瞬、時間を忘れていた。
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