第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
13章

潜入開始

王国創立記念式典。
そして、騎士団合宿1日目。

私は――男として、ここに潜入している。

「セナ、私じゃなくて……、俺のことは……そうだな。ソラって呼んでくれ」

「それはまた、小説の主人公みたいな名前ですね」

「小説でヒロインとうまくいかなくて病んだ挙げ句、怪物になって討伐される役なんだけどな!」

「……相変わらず物騒ですね」

セナは小さくため息をついた。

「みんなも気をつけて。俺は“ソラ”だからな」

「了解です」

「わかった」

アレンとロベルトも素直に頷く。

広場には、各地から集結した騎士団がぎっしりと並んでいた。
鎧のきしむ音、号令、剣が風を裂く音――すべてが本気そのもの。

走り込み。
筋力訓練。
延々と続く素振り。

――これは、すごい。

さすが王国直属の騎士団。
どれも実戦を想定した、容赦のないメニューばかりだ。

(これ、本気でうちにも取り入れたいな……)

感心しながら、ふと隣を見る。

「……き、きついです……」

赤銅色の髪が、完全にしおれている。
顔色も悪く、今にも倒れそうだ。

「確かに厳しいが……少しだらしないぞ」

ロベルトが苦笑しながら、彼の肩を軽く叩く。

「う、訓練内容が想像以上で……」
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