第5部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
騎士団員として食堂を利用しながら、あちこちの噂話に耳を傾ける。
だが、特に目新しい情報は――ない。

(今のところは静かすぎるくらいだな)

そう思った、その時。

「なあ、王妃教育の場でさ。
 魔宝獣が出たらしいぞ」

「それ、聞いた。
 あんな場所に魔宝獣なんて、自然に出てくるわけないだろ?」

「だよな。なんか陰謀めいてるよな」

「でもさ、ティアナ様とその騎士が食い止めたらしいぞ」

「そうそう。
 王国騎士団の出る幕じゃなかったって話だ。
 正直、すげえよな」

――まさかの、自分の話。

手元の食器を持つ手が、ぴたりと止まる。

「それよりさ。
 ティアナ様って、マジでディラン殿下と恋仲なのか?」

「婚約宣言してたしな」

「いや、あれは政治的なやつだろ?」

「じゃあ……ローゼ嬢が濃厚か?」

(……そこまで出回ってるのか)

胸の内で、ひそかにため息をつく。

情報を集めていたはずが、
いつの間にか自分の評判を集める側になっていた。
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