まっすぐで、輝け。
STEP10
「ゆうやくん、おはよう…!」
私はゆうやくんに声をかけると
「おはよ」
笑顔のゆうやくんが返事をくれる。
これだけで心がほくほくする、そんな最近。
「ゆうやーなんだよーニヤニヤしちゃってー」
「ってか、挨拶してるだけでよくもまあ幸せそーに!」
サッカー部の子たちに、かわいがられるゆうやくん。
「…ニヤニヤしてないって!」
とゆうやくんは反抗するも、顔は完全に緩んでる…
あの顔にしてるのは…私…??
ばちっ
思わず目が合う。
嬉しいけど、やっぱり恥ずかしすぎる!!
ぱっとすぐ目を逸らす私…。
でも,ゆうやくんはニヤニヤして私を見ているのを空気で感じる。
完全に浮かれてるゆうやくんを見ると、私まで浮かれちゃう…
これが、両思い…
きゅうううっ。
胸がいっぱいになる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「え、あの子、ゆうやくんと付き合ってんの?」
「おかしくない?見る目無っ、」
クラスの一部の子が納得していないのをこの頃の私は気づいていなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
キーンコーン
放課後を知らせるチャイムが鳴る。
サッカー部はグラウンドへ走っていく。
ゆうやくんは準備を急いでる。
私は、自習をするからのんびりしてる。
ゆうやくん、忙しいよなー…。
ゆうやくんをじっと見ていたらーーー
「ねえー黒澤さーん」
え。
そこにはクラスメイトのなつちゃんがいた。
「あのさー、掃除お願いしてもいい??」
「あ、うん!」
「ありがと!」
なんか用事でもあったのかな…?
あ、私が教室最後まで残ってるからかもなー。
でも、いいや!
だって、教室からは、グラウンドで練習してるゆうやくんが見れるから。
グラウンドを見ると…
「はい!」
シュート練習してる。
かっこいいや。
私も頑張らないとね。
この日を境に、私はなつちゃんになぜか時折指示をされるようになった。
「これおねがーい」
「今日はこれもーー」
なんでなんだろう…と理由もわからぬままただ指示に従う日々。
そんな中、放課後
「黒澤さん……今日オフだから、一緒に櫻公園行かない?」
とゆうやくんに誘われた。
私は嬉しくて思わず笑顔で
「うん!」
と大きな声で言う。
やった、やった!!
ゆうやくんも嬉しそう…楽しみができちゃった。
サッカー部の子も聞いていたのか
「久しぶりのオフなのに、ゆうやはサッカーかよー」
「どんだけ好きなんだよ!楽しんでーー」
と相変わらず茶化してる。
でも、それすらも嬉しくて。
私は笑顔が止まらない。
それを見て、ゆうやくんも微笑む。
じーーーん
ゆうやくんの笑顔、ほんとにいいな…。
放課後が早くきてほしいと思いすぎてるからか、時間が経つのが遅い。
まだお昼休みだ……
お手洗いを済ませ、教室に戻ろうとするとーー
「黒澤さーん」
私は思わず顔が強張る。
だってこの声はーーーーー
「今日、教室掃除お願いしてもいい??」
私の放課後を奪うから。
「なつちゃん…」
私の返事を聞くまでもなく
「よろしくー」
と立ち去られてしまう。
あーーー…私のばか……
なんで断れないんだろう…
ずーーーん…
落ち込んだままゆうやくんたちのところへお昼ごはんを食べに行く。
黙ったままはだめだ…正直に言おう…
「あの!ゆうやくん…」
「ん?」
にこにこのゆうやくん。
ああ…自己嫌悪…。
「あの…!放課後、掃除頼まれちゃって…掃除終わったらすぐ行くから…!!」
正直に伝えられた…!!
「……」
ゆうやくんの表情は一気に暗くなる。
あ。怒らせちゃった…。そうだよ。当たり前だよ。約束が先だった…
「ごめんなさい」
謝ることしかできない…
「早く終わらせて行くから…」
ああ。ああ。うーーー…苦しい…
無言で立ち上がるゆうやくん。
え。
飽きられた??
約束の一つも守れない人、嫌だよね。うん。誠実なところが、ゆうやくんの素敵なところだもん。
………このままじゃ嫌だ。
ゆうやくんに嫌われたくない…。
ちゃんとできないものはできないと言おう。
こわい。怖いよ…でも、頑張らなきゃ。
「ごちそうさまでした!」
お昼ご飯を早くに済ませる私。
「はやっ!」
隣にいたサッカー部の子がびっくりしてる。
「ちょっと用事あったんだった!いってくる!」
なつちゃんにちゃんと伝えよう。
教室内を見渡す。
なつちゃん…
なつちゃんも私を見ていた。
私、がんばれ…!
怖いけど、がんばるんだ…!!
なつちゃんに近づく私。
「あ、あの!!!」
勇気を振り絞って声をかける。
なつちゃんは一旦目を逸らし、
「なに?」
冷たい声と目が私を刺す。
怖い。
思わず強張る。声も出ない…
「あ、あっ………」
頑張れ、頑張れ私!!!
「なに??」
「っ……」
自分が嫌だ。なんで、なんで、なんで…
その時、ふっとゆうやくんの顔が浮かぶ。
いつもまっすぐで、でも時々奥手にもなって。
困った時には、私を助けてくれる。
そんなゆうやくんと一緒にいられないのは、1番嫌だ。
勇気を振り絞る。
いけ、いけ、わたし!!!
「あの!!!掃除当番、私、用事あって…できないです!!!」
い、い、い、いえた…!!!
シン………
あまりにも大きな声で叫んだからか、教室が静かになる。
なつちゃんは、聞き耳を持たないつもりなのか、私をきつい目で一瞬睨んで、無言で教室を出ようとする。
なつちゃんが教室を出ようとするとーーーー
「っ…」
扉の前にゆうやくんが立っていた。
「…」
無表情のゆうやくん。
「いやっ、あのっ、かりんちゃん優しいから、やってくれてて…助かってるなーって…」
何も聞かれてないのに、必死に弁明するなつちゃん。
「…」
まだ無言だ。
「私たちだって手伝おうと…」
なつちゃんの友だちがかばおうとすると、
ゆうやくんの目がさらに鋭くなる。
「今日、掃除当番、誰?」
ビクッとするなつちゃん。
「…私です…」
「よろしく」
そう言ってゆうやくんは教室に入ってきた。
無表情のゆうやくんは、静かに着席する。
強いよ。ほんとに。尊敬する。
私は、そんなゆうやくんに相応しい人になりたいな。
そのためにも、伝えなきゃ…
「ゆうやくん……ありがとう…」
そう伝えると…
ガタッ。
座ったばかりの席を立つ。
「……来て。」
そう言われ、向かった先はーーーー
サッカー部の部室。
ガチャ。
扉が閉まる。
そして、
「抱きしめていい??」
そう聞かれた。
「うん…」
迷わず返事をすると
ぎゅううううううっ…
ゆうやくんに抱きしめられてる…
ぎゅうううううう
「!!!!??」
どんどん強くなる…
「ど、ど、どうしたの!??」
「……」
「ごめん…しばらくこうさせて。」
え。
普段見ない一面に、ドキッとする。
こうさせてしまったのは、私だ…。
「ごめんなさい。ほんとにごめんなさい。」
ゆうやくんの腕が解け、目が合う。
「謝らなくていいんだよ。何も悪いことしてないだろ」
優しいゆうやくんの顔が見えた。
あ。いつもの顔だ…
「でも、ちょっと目を離してるだけで、なーんか巻き込まれてるし、なーんか勝手に成長してるし」
ちらっとゆうやくんが私の目を見てはニヤッとする。
「かっこよかったよ」
どきん。
ゆうやくんが褒めてくれた……
ぽろっ…
安心して、涙が出る。
「…ごめん、目にゴミが…入っただけ…っ…」
ボロボロ止まらない涙。
必死にハンカチで拭うけれど、全然間に合わない。
「うん。よく頑張ったよ。」
優しいゆうやくんの言葉に、余計に涙が止まらなくなる。
でも、悲しいだけじゃない。嬉しさもあるから、笑みも溢れる。
涙を流しながらも笑う私をじっと見ているゆうやくん。
その視線に私が気づくと、
ふいっと
目を逸らされる。
「…」
無言になったゆうやくん。
顔を腕で隠すも、耳まで赤くなってる。
どきん。
こんなゆうやくん、見たことない…
もっと見たいーーーーー
思わず顔を近づけるーーーー
ゆうやくんの顔が動く
「っ!??」
ち、近っ……
「…もう…本当にずるい。…キスしたくなるだろ。」
「…!??」
「あっ…っえ!??」
「好きだ…」
「嫌なら、止めて…」
どんどん近づく…
嫌…じゃ…ない……
目を閉じる私…
「っ!??……」
キスを落とす。
ちゅっ。
「………」
静かな部室に、私たちの音だけが響く。
「…今日は、邪魔が入らないな…」
ゆうやくんが言う。
「…うん…」
「……。」
何か話せばいいのに、お互いに話すことが思いつかない…。
まだまだ私たちは慣れない。
それで、いいんだ。
おわり
