幼馴染だからね
 私は幼馴染の御月(みつき)くんのことが好き。でも、御月くんは全然私に気持ちを伝えてくれないの。
 私は朝の通学路を歩きながらチラリと隣を歩く御月くんを見た。スッと通った鼻筋。小さな顔。前髪が少しかかった切れ長の瞳に長いまつ毛。私の大好きな御月くん。今日もかっこいいね。
希蘭(きら)ちゃん。また放課後ね」
「ん。一緒に帰ろうね」
 教室の前でばいばい、と手を振る。私と御月くんはクラスが違う。だからここで離れ離れになってしまう。
 離れ離れ、という言葉は嫌いだ。だって私と御月くんは生まれた病院も日にちも同じで、ほとんど家族みたいに育ってきたから。だからこれからも一緒にいるに決まっている。

 放課後。私はクラスの男の子に呼び出されて、体育館裏に来ていた。男の子はそわそわして、顔を赤くしながら私に言う。
「希蘭さんのことが好きです!俺と、付き合ってください」
 まさか、と思った。私のことを好きと言ってくれる人は御月くんしかいないと思っていたのに。嬉しい気持ちでいっぱいになる。だから、私はその子の手を取った。その日、私は初めて御月くん以外の人と通学路を歩いた。

 私は彼氏と一緒に自分の家に帰って、荷物を置いてから御月くんの家に来た。一緒に帰る約束を破ったことを怒られるかもしれないと思ったけれど、御月くんは笑って許してくれた。御月くんは優しいのだ。
「私、付き合うことにしたの」
「……そっか。おめでとう」
 イライラした。そうじゃない。そうじゃないでしょう。
「うん。じゃあ、寝るから」
 こういう時は不貞寝するに限る。

 起きたら朝になっていた。服のポケットの中からスマホを取り出す。見ると、彼氏から別れようとメッセージが入っていた。え?と思った。昨日は好きだと言ったくせに。昨日勝手に寝転がった御月くんの布団から起き上がると、足が重いことに気付く。足は鎖で繋がれていた。
「おはよ、希蘭ちゃん」
「御月くん」
 真っ黒な目をした御月くんに、私はベッドに押し戻された。強い力だ。抵抗できない。
 「別れるんだよね?もうあんな男、希蘭ちゃんに近付かないようにしたから。僕と付き合おう?ね?」
 ああ、御月くんがやったんだ。私は瞳を揺らす彼に腕を伸ばす。大丈夫だよ。やっと、私のものになってくれたね。御月も私のこと、ずっとずっと大好きだったもんね?知ってるよ。幼馴染だからね。
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