女神アフディーの初恋
教師から苦言
 ミシシッピ川のほとり、夏近づくの熱気にゆらぐ木造校舎。
 開け放たれた窓からは、子供たちの野卑な叫びと喧騒が、むせ返るような風と共に漏れ出していました。

 その時、廊下の端から、鋭く規則正しい音が響いてきます。

 カツ、カツ、カツ。

 板張りの床を刻むのは、メトロノームのように正確な靴音。
 現れたのは、隙のない漆黒のワンピースに身を包んだ女教師でした。

 背筋は教鞭よりも真っ直ぐに伸び、鼻先の銀縁眼鏡の奥では、冷徹な瞳が獲物を探すように光っています。
 彼女は教壇の重い扉を、音もなく、しかし威圧的に押し開けたのでした。

「……お静かに。なんお騒ですか? ここは運動場ではありませんのよ」

 低く冷ややかな一言。

 沸き立っていた教室は、魔法をかけられたように一瞬で凍りついたのでした。
 視線の先には、取っ組み合いの最中だった十三歳の少年ベンと、髪を振り乱した少女メアリー。
 
 女教師は氷のような眼差しを二人へ向け、逃げ場を塞ぐように訳を聞くのでした。

「さあ、説明なさい。その無残な有様は何事です?」

 女教師の視線の先には、床に無惨に散らばったピンク色の花びらが。
 ベンの手には、棘(とげ)で赤く傷ついた指先と、茎だけになった野薔薇が握られています。
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