女神アフディーの初恋

あんず色の頬と、カタツムリ

 ふと見ると、足元の「食いしん坊のうさぎ」が、何かを拾い食べようとしました。
 アフディー様はそれを取り上げると、アロンに見せるようにして語ります。

「見て。アロン。これ孔雀の羽よ。これを明日。みんなの所へ持っていけば。きっと信じてもらえるわ。よかった。本当によかった」

 自分のことのように、いえ、自分のこと以上に心から喜ぶ女神の笑顔。それを見つめるアロンの胸には、今まで感じたことのない温かな熱が広がり、頬をあんず色に染めるのでした。

 森を抜けると、世界はもう、燃えるような夕陽に包まれていました。
 二人は立ち止まり、今日一日歩んできた道のりを振り返ります。

 苔のむした危なっかしい丸太の橋。
 二人で転んで泥だらけになった沼地。
 そして、肩を貸し合って登りきった、あの高い丘。

 ――どれも、一人では決して辿り着けなかった場所。二人だったからこそ、どんな苦労も最高の喜びに変わったのだと、二人は言葉にせずとも確信していました。

 アロンは、夕闇に消えてしまいそうな彼女を引き止めるように、必死に言葉を紡ぎました。

「なあ、アフディー」

 アフディー様が振り向くと、天からふわりと、落ちてきた軽い感触に気づき、手を差し出します。
 手のひらに乗ったのは、森に入る前に攫われた「さよならを告げるカタツムリ」

 アフディー様の表情が、一瞬で悲しみに曇るのをアロンは見逃しません。
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