忘れないまま恋をした
「もし直哉を好きになったら」
「颯斗が遠くなる気がする」
声が震える。
「忘れたくない」
直哉は少しだけ笑った。
優しい笑い方。
「忘れないよ」
すぐに言う。
「そんな簡単に消えるもんじゃない」
そして、少しだけ間を置いて言った。
「俺も、消さない」
私は固まる。
直哉は続けた。
「柚の中にいる人だろ」
「だったら俺も一緒に隣にいればいい」
その言葉は、
競争でも、
奪う宣言でもなかった。
ただの事実みたいだった。