冤罪で聖印を奪われた令嬢、辺境で本物の大聖女になる ~傲慢令嬢ヒストリアの救済証明~
ーーエリザベートがヒストリアに親切だったのは、父であるガストの振る舞いの意図をよく理解していたからだ。
爵位の低いガストが権力欲しさに母親と結婚したこと。
成人すればフランドール家の女侯爵になる自分に面倒を見てもらうため媚びていること。
その全てを幼いながらに心得ており、恐れてもいた。
エリザベートはドレスを買ってもらえないヒストリアのために、父親に買い与えられたドレスをヒストリアの身丈に合うよう仕立て直させた。
贈り物のアクセサリーや宝石も、いつか必要になるかもしれないからとヒストリアに分け与えた。
エリザベートにとってヒストリアは保護対象。
いつだって妹を守ろうと陰ながら手を差し伸べていたのだ。
その行為にガストが怒ることはなかった。
なぜなら気付いていなかったのだ。
ガストの性格を熟知し、物品は時を見て形を変えて譲る。
けして気づかれないように。
ガストはエリザベートを甘やかしているという実績を積み重ね満足し、母が鬼籍に入ってからは愛人を囲いよく家を出ることがあった。
この歪な家庭環境で乳幼児期を過ごしたエリザベートとヒストリアは心を通わせることが出来る唯一の家族。
ヒストリアは素直な少女だった。
特に読書と歌を好み、使用人の間では天使の歌声と称され、エリザベートは時間を見つけてはヒストリアの歌に合わせハープを奏でるなどして二人の間には確かな愛があった。
しかしこの姉妹の絆は、ヒストリアが五歳の誕生日を迎えたその日を境に壊れていった。