妊娠しましたが相手に婚約者がいました。今更私が本命? ご冗談を。
屈んでスニーカーを履いていると、頭の上から聞き慣れた低い声がする。

「お嬢、二十五歳のお誕生日おめでとうございます」
「園崎、あんた何しに来たの?」

園崎はツナギでも着ていればガテン系に見られるが、今はガッチリ黒スーツ。
スーツを着込んでいても手首の辺りからは刺青が見えてしまっていて、一目で堅気の人間には見えない容貌をしている。
眉毛もはっきりいって、平成初期を思わせる細眉にし過ぎだ。
極道の世界では流行に惑わされず、細眉が流行り続けている。

「お嬢のお誕生日をお祝いしたいと、親分が祝いの席をご用意しております」

私は強張った顔で縋るように見つめてくる園崎の目をまじまじと見つめた。
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