空を知らない君に贈る唄
「……ったく。新⼈の歓迎会にしちゃ、派⼿すぎだろ」
そう呟きながら、左右のホルスターから錐⼑を抜き放ち、
両⼿に⼀本ずつ構える。
⼆⼈は、何も⾔わなかった。
ただ、ほんの⼀瞬だけ互いを⾒て――頷き合う。
それだけで、⼗分だった。
そして、振り返らないまま、美織が⾔った。
「今から、私と誠司はあいつらをぶっ倒してくる。だから――」
⼀度、⾔葉を切る。
その隙間を埋めるように時川も深く息を吸い込み、続けた。
「「――安⼼して待ってなよ!」」」
⼆⼈の声が、ぴたりと重なる。
その瞬間、伊織と怜奈が同時に⼿を伸ばした。
「待って美織さん!!」
「時川さん無茶です!!」
だが、掴もうとした指先は、虚空を切るだけだった。
美織と時川は、もう⾛り出していた。
巨⼤な異喰の群れに向かって、迷いなく。
その横顔は――
恐ろしいほどに綺麗で、凛々しかった。
澄華は、ただ⽴ち尽くし、その背中を⾒送ることしかできなかった。
(……ああ)
胸の奥が、きゅっと締め付けられる。
(あの⼈たちは……本当に……)
英雄のようで。
それでいて、ひどく脆く⾒えて。
澄華は、知らず、拳を強く握りしめていた。