夢見草が咲くころに

  *

 由衣ちゃんの見せてくれたイラストは、ユメミさんとコタロウに似ている。

 夢の中のコタロウは、どんどん大きくなっていた。
 最初にゲーム画面を見たとき、思わず「コタロウ?」と呟いた私の話を、笑いもせずに聞いてくれた由衣ちゃんと実乃里ちゃん。
 どこまで信じてくれたかは分からないけれど、二人はいつも私の味方で、きっとコタロウは「鈴の王子様」なんだと笑ってくれる。


「ねえ、これ見て。桜の別名だって。知ってた?」

 実乃里ちゃんがカフェのミニ新聞を指すと、そこには綺麗な桜の写真。

「挿頭草(かざしぐさ)、たむけ花、夢見草。へえ、なんだか綺麗だね」

「夢見草?」

 その名前に胸が高鳴る。
 夢見草は、空想の花だとばかり思いこんでいた。

 桜の季節にコタロウは来るの? また会えるの?
 今年は十年桜が咲きそうだと祖父が言っていた。

 突然由衣ちゃんたちが驚いたようにポカンとする。
 顔を上げると二人の後ろにある鏡のような大きなガラスに、私と、いつの間にか後ろに立っていた男性の姿が映っていた。

 サラサラの黒い髪に端正な顔立ち。でも目だけはいたずらっぽくキラキラと輝いていて、思わず呼吸が止まる。

「鈴……」

 初めて聞くはずなのに懐かしい、低い声。

 胸が締め付けられて目の奥が熱くなる。

 待ってた、会いたかった。とてもとても会いたかった!

 私は急いで目元を拭い、彼の名前を呼ぶ準備をしながら笑顔で振り向いた。
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