夢見草が咲くころに

  *

 由衣ちゃんの見せてくれたイラストは、ユメミさんとコタロウに似ている。

 夢の中のコタロウは、どんどん大きくなっていた。
 最初にゲーム画面を見たとき、思わず「コタロウ?」と呟いた私の話を、笑いもせずに聞いてくれた由衣ちゃんと実乃里ちゃん。
 どこまで信じてくれたかは分からないけれど、二人はいつも私の味方で、きっとコタロウは「鈴の王子様」なんだと笑ってくれる。


「ねえ、これ見て。桜の別名だって。知ってた?」

 実乃里ちゃんがカフェのミニ新聞を指すと、そこには綺麗な桜の写真。

挿頭草(かざしぐさ)、たむけ花、夢見草。へえ、なんだか綺麗だね」

「夢見草?」

 その名前に胸が高鳴る。
 夢見草は、空想の花だとばかり思いこんでいた。

 桜の季節にコタロウは来るの? また会えるの?
 今年は十年桜が咲きそうだと祖父が言っていた。

 突然由衣ちゃんたちが驚いたようにポカンとする。
 顔を上げると二人の後ろにある鏡のような大きなガラスに、私と、いつの間にか後ろに立っていた男性の姿が映っていた。

 サラサラの黒い髪に端正な顔立ち。でも目だけはいたずらっぽくキラキラと輝いていて、思わず呼吸が止まる。

「鈴……」

 初めて聞くはずなのに懐かしい、低い声。

 胸が締め付けられて目の奥が熱くなる。

 待ってた、会いたかった。とてもとても会いたかった!

 私は急いで目元を拭い、彼の名前を呼ぶ準備をしながら笑顔で振り向いた。
< 7 / 7 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

星降る夜に、あの日のキスをもう一度

総文字数/3,987

恋愛(純愛)4ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
他サイトのタイトルは 「転生するたび短命でしたが、今世では40歳の誕生日を迎えられそうです ~過去に2度も求婚されかけていたって――えっ? 嘘でしょう?~」。 魂に刻まれた呪いで、どんな世界に生まれても二十歳前後で悲惨な死を遂げてきたアンジェラ。 今世では奇跡的にも40歳の誕生日を迎えられようとしていたある日、幻視の魔法で姿を偽り、家庭教師の代理として学生時代の知人コンラッドの屋敷を訪れる。 しかしその屋敷ごと異世界に転移。そこは前前世の自分が、勇者と旅をし非業の死を遂げた世界だった。 勇者の子孫として召喚されていた教え子とも再会。彼らを無事帰すことこそが今世の使命だと思うアンジェラ。 しかし彼女は気づいていなかった。 コンラッドの娘がアンジェラとパパを結婚させようと計画していたことを。 そして、何度も違う姿で出会い恋した相手がすべて同じ人だったことを。 アンジェラの呪いは解けるのか?
表紙を見る 表紙を閉じる
前世で、戻ってくると約束したらしいんですけど……
表紙を見る 表紙を閉じる
罰ゲームで求婚?でもこんなに好みの男、今後二度と会えないわよね?

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop