氷の令嬢は、最強(?)総長の『子守役』を命じられる
最強総長のしつけかた
翌朝。校門をくぐった瞬間、空気の密度が明らかに違っていた。
視線の先には、昨日の「泣き虫ウサギ」とは似ても似つかない、鋭い眼光を飛ばす龍崎蓮が立っている。
(……ふん。見た目だけは、一丁前ね)
私はあくびを噛み殺しながら、いつも通り登校しようとした。
すると、金髪をなびかせた龍崎が、重厚なエンジン音を響かせるバイクから降り、大股でこちらへ歩いてくる。
周囲の生徒たちが、波が引くように道を開けた。
「おい、如月」
低く、地を這うような声。女子たちが「ひっ」と短い悲鳴を上げる。
龍崎は私の目の前で立ち止まると、逃げ場を塞ぐように壁に手をついた。いわゆる『壁ドン』だ。
けれど、至近距離で私を見下ろす彼の瞳は、小刻みに痙攣している。
(……あ、こいつ。今、めちゃくちゃ震えてる)
耳をすませば、「助けて、心臓止まる、無理、死ぬ」という彼心の叫びが、蚊の鳴くような声で漏れ聞こえてきそうだ。
私は冷めた目で彼を見上げ、わざと大きな声で言った。
「なによ。昨日の続き、やるの?」
「……ああ。約束通り、迎えに来てやったぞ。お前は今日から、俺の女だ。異論は認めねえ」
――全校生徒が、凍りついた。
一瞬の静寂の後、割れんばかりの悲鳴とどよめきが校門付近に爆発する。
「ええええっ!? あの氷の毒舌姫が、総長の彼女!?」
「マジかよ、あの龍崎が女を連れてるなんて……!」
龍崎は、震える手で私の肩を抱き寄せた。
傍から見れば、強引にヒロインを奪い去る最強の男。だが、私の肩に伝わってくるのは、生まれたての小鹿のような激しい震動だ。
「……ねえ、龍崎くん。震えすぎ。バレるわよ」
私は彼の耳元で、甘く、けれど氷のように冷たい声で囁いた。
「っ……! む、無理言うな……! こんなに女が近くにいるの、人生で初めてなんだよ……! 吐きそう……!」
「吐いたら殺す。ほら、ちゃんと私の顔を見て、余裕のある笑みを浮かべなさい。ポチでしょ?」
私が彼のネクタイをぐいっと引き寄せると、龍崎は顔を真っ赤にして固まった。
周囲からは「朝から熱烈すぎる!」と勘違いの歓声が上がる。
教室に入っても、騒ぎは収まらなかった。
私の机の周りには、好奇心の塊となったクラスメイトが群がる。
「ねえ如月さん、どうやってあの総長を落としたの!?」
「やっぱり、脅されたの? 大丈夫?」
「……別に。あんなの、ただの寂しがり屋の大型犬よ。私が躾けてあげてるだけ」
私が鼻で笑うと、廊下で聞き耳を立てていた龍崎が、ビクッと肩を跳ねさせた。
彼は「総長の威厳」を守るため、取り巻きの男たちに囲まれながら、精一杯の強がりを見せている。
「ふん、如月は俺がいないとダメな女だからな……。守ってやらねえと」
――なんて、嘘八百を並べ立てながら。
けれど、そんな私たちの「偽装工作」を、冷ややかな目で見つめる男が一人。
窓際の席で優雅に読書をしていた生徒会長、一ノ瀬(いちのせ)だ。
彼は本を閉じると、私と目が合った瞬間、意味深な微笑を浮かべた。
「如月さん。あんな野蛮な男と付き合うなんて、君らしくないね。……何か、弱みでも握られたのかな?」
その目は、龍崎の「偽り」を見抜いているかのように、鋭く光っていた。
視線の先には、昨日の「泣き虫ウサギ」とは似ても似つかない、鋭い眼光を飛ばす龍崎蓮が立っている。
(……ふん。見た目だけは、一丁前ね)
私はあくびを噛み殺しながら、いつも通り登校しようとした。
すると、金髪をなびかせた龍崎が、重厚なエンジン音を響かせるバイクから降り、大股でこちらへ歩いてくる。
周囲の生徒たちが、波が引くように道を開けた。
「おい、如月」
低く、地を這うような声。女子たちが「ひっ」と短い悲鳴を上げる。
龍崎は私の目の前で立ち止まると、逃げ場を塞ぐように壁に手をついた。いわゆる『壁ドン』だ。
けれど、至近距離で私を見下ろす彼の瞳は、小刻みに痙攣している。
(……あ、こいつ。今、めちゃくちゃ震えてる)
耳をすませば、「助けて、心臓止まる、無理、死ぬ」という彼心の叫びが、蚊の鳴くような声で漏れ聞こえてきそうだ。
私は冷めた目で彼を見上げ、わざと大きな声で言った。
「なによ。昨日の続き、やるの?」
「……ああ。約束通り、迎えに来てやったぞ。お前は今日から、俺の女だ。異論は認めねえ」
――全校生徒が、凍りついた。
一瞬の静寂の後、割れんばかりの悲鳴とどよめきが校門付近に爆発する。
「ええええっ!? あの氷の毒舌姫が、総長の彼女!?」
「マジかよ、あの龍崎が女を連れてるなんて……!」
龍崎は、震える手で私の肩を抱き寄せた。
傍から見れば、強引にヒロインを奪い去る最強の男。だが、私の肩に伝わってくるのは、生まれたての小鹿のような激しい震動だ。
「……ねえ、龍崎くん。震えすぎ。バレるわよ」
私は彼の耳元で、甘く、けれど氷のように冷たい声で囁いた。
「っ……! む、無理言うな……! こんなに女が近くにいるの、人生で初めてなんだよ……! 吐きそう……!」
「吐いたら殺す。ほら、ちゃんと私の顔を見て、余裕のある笑みを浮かべなさい。ポチでしょ?」
私が彼のネクタイをぐいっと引き寄せると、龍崎は顔を真っ赤にして固まった。
周囲からは「朝から熱烈すぎる!」と勘違いの歓声が上がる。
教室に入っても、騒ぎは収まらなかった。
私の机の周りには、好奇心の塊となったクラスメイトが群がる。
「ねえ如月さん、どうやってあの総長を落としたの!?」
「やっぱり、脅されたの? 大丈夫?」
「……別に。あんなの、ただの寂しがり屋の大型犬よ。私が躾けてあげてるだけ」
私が鼻で笑うと、廊下で聞き耳を立てていた龍崎が、ビクッと肩を跳ねさせた。
彼は「総長の威厳」を守るため、取り巻きの男たちに囲まれながら、精一杯の強がりを見せている。
「ふん、如月は俺がいないとダメな女だからな……。守ってやらねえと」
――なんて、嘘八百を並べ立てながら。
けれど、そんな私たちの「偽装工作」を、冷ややかな目で見つめる男が一人。
窓際の席で優雅に読書をしていた生徒会長、一ノ瀬(いちのせ)だ。
彼は本を閉じると、私と目が合った瞬間、意味深な微笑を浮かべた。
「如月さん。あんな野蛮な男と付き合うなんて、君らしくないね。……何か、弱みでも握られたのかな?」
その目は、龍崎の「偽り」を見抜いているかのように、鋭く光っていた。