キャンディ

3月13日

金曜日、放課後。掃除が終わったあとの教室は、西日が差し込んでオレンジ色に染まっていた。

「ほら。これ、やるよ」

不意に机の上に置かれたのは、コンビニのレジ横でよく見るのど飴だった。
差し出した本人の佐藤くんは、小学校からの腐れ縁で、今はクラスメイト。
家も近くて、親友と言っていいくらいには見慣れた存在だ。
そんな彼が、今はなぜか、気まずそうに窓の外を眺めている。

「……のど飴?」

「ああ。……大阪のおばあちゃんみたいって言うなよ。
お前、今週ずっと静かだったから。
喉でも痛めてんのかと思って」

私が一ヶ月前のことで落ち込んでいた間、ずっと近くにいたこの人は、私のことを見ていたんだろうか。

「……ありがと」
「おう。……あ、そうだ。明日、暇ならショッピングモール行かねー?
喉にいい飲み物とか、奢るからさ」

佐藤くんは答えを待たずに、逃げるように教室を出ていった。

一人残された私は、のど飴を手に取り、ゆっくりとその包みを開けた。
口の中に放り込む。
のど飴だから、当然スースーして鼻に抜けるような感じはあるんだけど。
でも。
口に入れてみたら、思っていたよりずっと甘かった。
< 2 / 3 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop