買われた花嫁
 以前は拒んでしまったそれが触れた瞬間、ぞくりとしたものを感じて背中の毛が逆立つ。

 不快感ではなく、強い戸惑い。胸がじくじくして鼓動が速くなる。

「紗代」

 名前を呼ばれて、大きく心臓が跳ねた。

 両親の前で初めて彼に呼ばれた時は、意識するどころではなかったけれど今は違う。

 これまで知らなかった一面を見せられ、思いがけない言葉を与えられて――強く意識してしまった。

「君を縛る鎖をほどいてやる」
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