買われた花嫁
「金で買われた妻だということも充分理解しておりますので。あなたのお好きなようになさってください」

 そこまで言い切ると、ずっと無感情だった瞳に意外そうな光が浮かんだ。

 しかし表情にまでは表れず、彼は私を流し見て言った。

「理解しているのならありがたい話だ。……さっさと手続きを済ませよう」

 私の反応を待たず、彼は市役所の自動ドアの向こうへと踏み出した。

 式もない書類提出だけの結婚。私たちほどふさわしい夫婦はいないに違いない。
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