吹き飛べ私の魔法
第一章 言葉の魔法
「唯ー!早く行かないと遅刻するよ!!」

苛立ちを垣間見せながら母が私に叫ぶ。母が発するこの言葉には、いつも私の心をどんよりとさせる効果がある。

眠気と母の言葉に憂鬱になりながらも学校の準備をして、玄関の扉を開ける。

「いってきます」

気だるそうに私が言うと母は、さっきとは打って変わって少しだけ明るく返事をする。

「いってらっしゃい」

このやり取りは我が家での約束。あの日、弟の翼が帰ってこなくなった日から作られた唯一のルールだ。

それをこなした私は、小鳥のさえずりと夏の朝日を浴びて通学路を歩いていく。

近所の家の庭からはいくつかのひまわりが伺えて、少し心が踊る。

朝は苦手だけれど、こうして毎日辺りの景色を見回すのは好きだ。

「ゆいーーー!」

私が五分程歩いた時に、ドタドタという足音と共にやって来た声に私は振り返る。

見えるのは保育園からの私の幼なじみで、唯一の親友、山本咲希だ。

咲希は私を見つけるとこうして追いかけてくる。

その時に私を呼ぶ咲希の声は、ふわっとしていて、私の全てを優しく包み込んでしまう。

そんな声だ。

「おはよう!咲希!」

「お、おはよう」

先程まで走っていたからか、咲希は息を切らしながら返事をする。

「すごい息切れだね、大丈夫?」

荒れ果てた様子の咲希をからかうように、私は喋りかける。

「ゆい、を、見つけた、から、走ってぇ、来たよぉぉぉ」

ゾンビと間違えてしまいそうな物言いに私は思わず吹き出してしまう。

それを見た咲希も自然と口元を綻ばせて、私達の通学路には、盛大な笑い声が響き渡った。

楽しい気分になった私は、更に咲希を疲れさせようと走ってゾンビから逃げた。

それを見たゾンビは必死に追いかけて、その調子で私達は学校へと向かう。

「ゾンビにぃ、ゾンビにしてやるぞおお」

大声でそう叫ぶ咲希と笑いながら走る私の様子を、実はランニング中だった隣の人に見られてしまったことは恥ずかしいから心に秘めておこうと思う。


「おはようございます。ええ、今日は六時間目に学年集会がありますので時間を守って行動してください。それから……」

先生の話を聞き流しながらぼうっと外を見つめてみる。

正直、学校は嫌いだ。
「起立。気をつけ。礼」

朝の挨拶が終わるとクラスの皆はそれぞれのグループに別れて喋り出す。

中には一人で本を読む子や廊下に出てほかのクラスの友達と話している子もいるけれど稀だ。

私が学校が嫌いな理由はこれ。

私は喋るのが苦手だから、咲希が喋りかけてくれないと私はいつも一人ぼっちになってしまう。

いや、本当は苦手と言うより、怖くなってしまったという方が正しい気がする。

そのきっかけはあの日、翼の火葬の日。

その時の私は、もうどうしようもできなくて、その場で泣いて泣いて、身体中の水が無くなるまで泣いた。

通夜でも葬式でも何回も涙を飲んで泣くのを我慢していたけれど、骨だけになった翼を見たら我慢していたもの全てが溢れ出してしまった。

言葉で表すなんて到底できやしないほどの悲しみと後悔とその中にこびりつく焼け焦げた匂い。

それらが全て混ざりあって、私の心を襲った。

耐えられなくなった私は、泣きながら骨を拾い上げる母と父を横目に外へと飛び出した。

私を止めようとするお母さんの声は、もはやなんと言っているかも分からなかった。だから、私は何も分からないふりをして走り続けた。

それからどのくらい走っただろう。呼吸は酷く荒く、肺は刺さるように痛い。

火葬場からどれだけの距離を走ったかは分からないけれど、無意識のうちに橋の上に来ていた。

鉄骨で作られた白くて硬い橋。

下を見ると大きな川がうねうねと泳いでいる。

耳元で飛び散る水しぶきの音が、まるで私を責めているよう。

ここは、翼が飛び降りた場所。翼の死因は学校でのいじめによる自殺だった。

彼がどのようないじめにあっていたのか、どんな思いで学校に行っていたのかは、何も知らされていないから分からない。

それでも翼のことだから辛い中で毎日耐えながら生きていたに違いない。

私の頭の中で色々な翼の顔が思い浮かぶ。

笑う顔。怒った顔。泣いている顔。悔しそうな顔。楽しそうな顔。

でも、そのうちのどれを探してもやはり翼が死にたいだなんて思う顔が汲み取れない。

「どうして……どうして……」

呟いても、叫んでも全てが虚空に消えていく。

自分が何も出来なかったという悔しさと、当たり前のようにそこにあったものが抜け落ちて、どん底に落ちていく苦しみと、あとは自分でさえも何がなんだかよく分からない気持ち。

突然、波のように押し寄せたその感情は、私の胃の中をひっくり返した。

「う、うぇっ……」
いきなり飛び出した吐瀉物に私は手を口に当てて、橋の柵の上から川を覗く。

塵のように川に流された吐瀉物を見送ってから、私はどうしようもなくその場に座り込んだ。

時々吹く生暖かい風が私の頬を伝っていく。

途中、橋を通りかかった車から私を心配そうに除く気配が感じられたけど、辺りはぼんやりとしていて、どうすることも出来ない。

「翼……つばさ……」

微睡みの中で押し出された私の声は、流れる川の水音に飲み込まれてしまった。


―――「……ゆい、唯、」
気がつくと私は布団の上で寝かされていた。

隣で私を呼ぶ声はお母さんによるものだった。

「お母さん?」

ゆっくりとお母さんを呼ぶ。

私は体を起こして辺りを見回す。

周りの景色は見慣れた家の寝室で、お母さんの後ろでは叔父さんと叔母さんも心配そうに私を覗き込んでいる。

そんな私の様子を見るなりお母さんは目を見開いて、

「こんな時に皆に迷惑かけて!何してんの!!なんであんたはまともな人間になれないの!いつもそう、弟の大切なときくらいあんたは人の心を持てないの!?」

そう叫ぶお母さんの顔は溢れ出る涙と感情に、ほとんど原型を留めていなかった。

翼を失ってから、お母さんはどこかネジが外れた玩具のように壊れてしまって、こうして当たり前のように心無い言葉を吐き捨てるようになった。

(私だって、どうしようもない程悲しくて悔しくてやるせなくて、それでも今ここにいるのに、それなのにっ……)

ぽんっという小さな音と共に、私の心が爆発する。

「いい加減にしてよ!!私だって……」

叫びながら、顔を母に向ける。

しかし、私は目の前の光景に言葉を失った。

(なに、これ)

先程母が私に向かって叫んだ心無い言葉が、真っ赤な炎を帯びて、鋭利な棘の形へと変化して目の前に現れていた。

何が起こっているのか、その場では全く理解できなかった。

そしてそれに近づこうとした次の瞬間、それがものすごい勢いで私の胸を目掛けて飛び込んできた。途端、私は激痛に襲われる。

「痛い、痛い、いたいっ!!」

あまりの痛さに、思わず叫んでしまう。

「おい!唯ちゃんどうした!大丈夫か!?」

いきなり響き渡った叫び声に驚いた叔父さんが私に駆け寄ってくる。

今度は叔父さんの心配する声が、柔らかな白いガーゼへと形を変えて私の胸へと吸い込まれていく。

すると先程の痛みが少し引いていくのがわかった。

「うん、大丈夫、大したことないよ。ちょっと足ひねってたみたい。それに驚いただけ」

そう誤魔化して、顔を上げると叔父さんの後ろでは母が頭を抱えて蹲り、叔母さんが母の背中をさすって宥めている。

「お前も大変なのはわかるけど、唯ちゃんも心の整理がつかなくて、大変なんだよ。だからそんなこと言わないでやってくれよ。辛い時はいつでも話聞くからさ」

そう言って母を慰めた叔母さんの言葉もまた他と同じように形を変え、冷たい雫へと化した。

その雫は綺麗に澄んでいて、見事に母と私を映し出していた。

「わかった……」

そうお母さんが叔母さんに返事をすると、その言葉が先程の雫とぶつかり合って、雫が割れる。

辺りには水滴が飛び散って、母と私の頭はいくつか冷えたようだった。

それから訪れたしばらくの静寂を、叔父さんが突き破った。

どこか気まずいといった様子で、徐に口を開いていた。

「そういえば、通りかかった車に乗っていた家族が唯ちゃんを気をかけてくれていたよ」

その言葉がぽっと飛び出て、ふかふかとした薄桃色の雲に変わる。

詳しく聞くと、その家族は橋の上で座り込んでいた私を明らかにおかしいとみて、車から降りて声をかけてくれていたらしい。

そこに後から私を追ってきた叔父さんが合流して、家まで運んできてくれた、と。

叔父さんはこの気まずい雰囲気を何とかしようと話しかけてくれたのだろうけれど、それを聞いた私はなぜだか無性に泣きたくなって、突然その場で大量の涙を流しながら、わんわん泣いた。

それにつられてお母さんもお父さんも泣き出して、皆で沢山泣いた。

何が何だか分からずに泣いた。

でも、私は一つだけ理解した。
きっと、私は魔法を手に入れた。

あの日、翼が聞いてきた、一つだけ願いが叶うとしたらどうするかという問いに、私は魔法使いになりたいと答えた。

その時は何となく生活が窮屈に感じて、そんなことを言った。

でも、私は今同じ質問をされても魔法使いになりたいと答えるだろう。

だから、こんな信じられない出来事を理解するにはそれしかないように思えた。

だって、この不思議な現象が起こる直前に聞こえた、ぽんっという音。

あれは、今でも忘れない、翼と私の大切な思い出の音だから。

私は魔法を手に入れたんだ。

――こうして私は、現在でも人の発した言葉が明確な形や物としてはっきりと見える。これは他人どうしの会話も例外ではなく、今も教室中に沢山の言葉が形を成して飛び交っている。

そのせいで、私は人と喋るのが怖くなってしまった。

実際の痛みを感じるのは私だけのようだけれど、それでもできるだけ痛い思いをしないように、できるだけ痛いをさせないように基本的に毎日決まった人以外とは会話をしない。

だから、今日も多くの時間は一人で過ごすことになるだろう。

そのことを悲しく思いながらも一時間目の授業までに少し時間があるので、机の中にしまってある本を取り出して、徐にページをめくる。

これは今日から読む新しい本だ。

ジャンルはファンタジー×ラブストーリー。私は魔法を手に入れてから、ファンタジー小説をよく読むようになった。

単純に興味を持ったというのもあったし、もしかしたら魔法のことについても、何か分かるかもしれないと思ったからだ。

早速、一行目の最初に目を当てて読み進めていく。

"僕は今、世界で一番奇妙な恋をしている"

というなんとも仰々しい一文からこの小説は始まった。

それからも何ページか読み進めて、プロローグを読み終わったところで、いきなりがたんと机が揺れた。

本に集中仕切っていた私は、驚いて体をはね上げる。

机の引きずられる音に嫌になりながらも顔をあげると、そこにはクラスメイトの永田くん率いるグループの男子達がいた。

永田くんはいかにも目立ちそうな出で立ちをしていて、実際にすごく目立つ。

よく声も通るし、率先してみんなの前に立つタイプの人だ。
だから私は正直永田くんに対して、幾許かの苦手意識を持っている。

「あ!俺この本読んだことある!唯ってこういう系好きなのか。なんか意外!」

机にぶつかったことに気づいていないのか、そのことについては何も触れずに、私の本に指をさして喋りかけてきた。

まさにこういうところだ。永田くんの苦手なところは。

明らかに人との距離感がバグっている。

私は永田くんとはほとんど喋ったことなんてないのに、こうして下の名前で呼んでくる。

それになんだ意外って。

意外もなにもほぼ喋ったことないだろ!という叫びは心に留めておいて、無視は流石にまずいので

「そうかなあ?」

と愛想笑いをしながら適当に答えておく。

「てかお前、本なんて読めるのかよ」

私の返答を無視して、永田くんの隣にいた佐藤くんがいじる。

それに対して永田くんは顔をふくらませて、怒った仕草をしながら

「読めるわあ!」

と笑いながら返事をしていた。

それを聞いた周りの男子達も一斉に笑い出す。

これに関しては何が面白いのかは本当に分からないのだけれど、このヘラっとした態度も私は苦手だ。

こんな風に何も考えずにいることに、何にも気づかずにいられることに私は苛立ちを覚えてしまう。

何も失ったことが無いから、誰にも構わず喋りかけられるのだと。

そんなふうに思っていると始業五分前のチャイムが鳴って、永田くんたちは私の席から離れていった。

皆が座り始め、授業の準備をし始めたので、私も最初の授業である社会の教科書をカバンから引っ張り出す。

それと同時に社会の先生が教室に入ってきて、私達は始まりの挨拶をする。

「 教科書五十六ページ開いてー」

という先生の合図と共に、私は教科書を開こうと手を伸ばす。

しかし開きかけたところで、私はピタリと手を止めた。

(しまった。前回の授業中に落書きしたんだった)

私は社会が苦手で、授業があまりにも退屈だったから、肖像画に落描きを始めたら想像以上の出来になってしまって、授業の後半では笑いを堪えるのに必死になってしまっていた。

もう既にその絵を思い出してだいぶ笑いを堪えている状態なのだから、今教科書を開いたら絶対に耐えられない。

かといってこのまま開かないわけにもいかないので、恐る恐る指定のページを開いていく。

ゆっくりと現れ出たのは、哀れな程におかしな顔をした聖徳太子だった。

昔、翼と家で教科書に一緒に落書きをしていて、お母さんに怒られたことがある。

それまでは二人でくだらない案を出し合って、描きこんでいった。

出来上がった後は二人で大笑いして、結局お母さんにばれるまでそれを何度も繰り返した。

その中の一つに聖徳太子の落書きがあったことを思い出して、もう一度アレンジを加えて描いてみたのだ。

あの時より明らかに絵が上手くなった私が描いた思い出の絵。

それが今は仇となって、私を苦しめているのだけれど。

そんなことを思い出しながら、また私は肩を震わせて笑いを堪える。

それを何度か繰り返していると、

「じゃあ、今日は十三日だから笹原。ここ答えて」

「へ?」

いきなり名前を呼ばれて思わず拍子抜けた声が出てしまう。

笑いに堪えるのに必死で、今日が十三日であることを忘れてしまっていた。

私の苗字は笹原で、出席番号は十三番だから、毎月十三日は高確率で授業中に当てられてしまうのだ。

「え、えっとぉ、」

先程まで震えていた肩はもう静かになっていて、代わりに心臓が激しく動いている。

「前回の復習だぞ?話聞いてなかったのか?」

先生の声が、面倒くさそうな薄暗い煙となって吐き出された。

それはもくもくと教室の天井にぶつかって、どこかへ飛んで行ってしまう。

答えが見つからなくて、 私がその場で口をぱくぱくさせていると先生が呆れた顔をして、黒板に答えを書き始める。

すると、一つの声がクラス全体に響き渡った。
「あ、俺わかった!!小野妹子だ!」

その声の正体は永田くんだった。

「違う」

すぐさま先生が永田くんの答えを否定すると、辺りからくすくすと笑う声が聞こえてくる。

「お前頭わっるー!小野妹子なわけねえじゃん」

それに乗じて、佐藤くんが永田くんをいじる。それを聞いた永田くんは、またいつもと同じようにヘラヘラと笑っていた。

話が逸れていったことにほっと胸を撫で下ろして、ノートを開いて黒板を写し始める。

それからは一度も先生に指名されることは無く、危機を脱した私は授業終了の挨拶までやり過ごした。

挨拶が終わり、椅子に座るとともに机の中に手を入れて探る。

授業前に読んでいた本を取りだして、ゆっくりと先程の続きのページを開こうとしたその時、ひらりと一枚の紙が手元から落ちた。

思わず手を伸ばしてつかもうとしたが、紙はふわっと浮いたり急に加速したりして、取り逃してしまった。そのまま地面に落ちた紙に目をやると酷く乱雑な文字で、"放課後に体育館裏で待つ"と書かれていた。

何事かと思って拾い上げてみるも、誰かに告白される予定はもちろん、ヤンキーと喧嘩をする予定もない私には体育館裏に呼び出される理由が分からなかった。

そもそも名前も記されていないから誰からの呼び出しなのかすらも分からず、しばらく考えをめぐらせる。

告白とヤンキーの可能性を除くと、誰かのイタズラか果たし状……?

いや、でもそんな変なこと何のために……

そんな風に考えながら紙を眺めていると、ふと誰かに声をかけられた。

「唯、次移動教室だぞ。鍵閉めるから」

後ろでは学級委員長の永田くんが教室の鍵を片手で弄びながら私を見下ろしている。

辺りを見渡すと教室には永田くんと私以外には誰もいなくなっていて、それに気がついた私は急いで教室を出る。

時計を見ると次の授業まであと一分程度しかない。

「やべえ、!遅刻だ!!」

必死に走っていると教室の鍵を閉め終わった永田くんが、叫びながら後ろから追ってくる。

陸上部に所属していてその中でも特に足の速い永田くんは、あっという間に私に追いついて、隣に並ぶ。

「ほら、唯!まじで遅刻する。村上先生怖いから早く!」

村上先生とは、次の理解の授業の教科担任の先生だ。

永田くんの言うように、村上先生は怒ると怖い。前も宿題をやってきていなかった生徒が厳しく怒られていた。

しかしそれはわかっていても陸に弱い私は、もう既に失速気味で、到底永田くんの速さには敵わない。

「私のこと待ってると遅刻するから、先行ってて」

息切れ混じりにそう言うと同時に、いきなり私の手がぐいっと引っ張られた。

「えっちょっえっ」

見ると、永田くんが私の右手を掴んでいた。それに戸惑いながらも何とか理科室へと向かう。

ちょうど理科室が見えてきたその時、壁にある時計の長針が動いて、カチッと音を鳴らした。


「だから、いつも時間は守れって言ってるだろ!社会に出たら遅刻なんて許して貰えないんだからな。ちゃんと時間内に来てる人達に迷惑だ」

大きく重く、鉛のようになった先生の怒りの言葉が頭の上に直接のしかかる。

怖い。重い。

次々に吐き出される言葉は形を成して、ますます私を押しつぶす。

先生に怒られていることもそうだけれど、それに以上に永田くんを巻き込んでしまったという怖さがある。

「もういい。時間の無駄だ。早く席に着け」
ようやく先生の叱責が終わり、私達は自分の席へと向かう。

悪いことに理解室だと席の配置の問題で私と永田くんは隣の席になってしまうのだ。

それが今はものすごく気まずい。

「じゃあ実験器具出して。やり方の説明はこの前したからいいな」

先生の合図で皆が実験器具を出して、用意を始める。

今日は中和滴定の実験だから、ビュレットやホールピペットなどを持ってきて机の上に置く。

ジョロジョジョロ。

実験を始めても、やはり何となく気まずくて、私たちの間に流れるのは液体をビーカーに入れる音だけだった。

さらにそこにフェノールフタレイン液を注入して、その上からアルカリ性の水溶液を入れていく。

「あ、」

沈黙の中で最初に声を発したのは永田くんの方だった。それはちょうど液体が青紫色に変化し始めたところで、中和が終わった証拠だ。

「紫色になったぞ」

「あれ、さっきちょうど良かったのになんか色濃くない?」

先程まで薄紫だった液体が明らかに濃い色になっているのを見て投げかける。

「え、これ色濃くするんじゃないの」

「え?違うよ」

「え」

ガビーンという効果音がつきそうな程にがっかりとした顔を見せる永田くんに思わず笑ってしまう。

「あはは。永田くんって案外ドジなんだね」

「し、しょうがねえだろ!理科は苦手なんだ!」

恥ずかしそうに頬を赤らめながら、永田くんが抗議する。

「いやいや!苦手とかいう問題じゃないでしょこれ!しかもなんで私の手は恥ずかしげもなく掴めるのに実験で失敗しただけでそんな恥ずかしそうなの」


私の放った言葉がしゅっと空中でレモンの形になって、永田くんの心に吸い込まれていく。

ほんのり苦くて酸っぱいレモン。


それをみて、私ははっとした。

魔法を手に入れてから楽しくもなかった人との会話が、今初めて少し楽しく感じていることに気がついてしまった。

しかも苦手だと思っていた永田くん相手に。

「いや、あれは遅刻しそうだったからしょうがないだろ。あ、でも、嫌だったならその……えっと、ごめん」

その言葉が青紫色の煙になって、目の前を曇らせる。

突然謝られたことに驚いた私は、何とか否定の言葉を探す。

「う、ううん!大丈夫だよ。びっくりはしたけどね。あ、えっと、私も……」

ごめんと言おうとしたその時だった。私達の真後ろから、覗き込むようにして村上先生が現れた。

「おい、これ何でこんなに色濃いんだ。薄紫色になったところで止めろって言ったよな?濃いと水道に捨てれないんだよ」

「ごめんなさい。次は気をつけます」

すぐさま先生に向けて謝る永田くん。私もそれに続いて謝罪する。

「また怒られちゃったな。あーあ、今日怒られてばっかだー」

先生の説教が終わって、ガックリとした様子で永田くんが喋りかけてくる。

「でも永田くん二日に一回くらいは絶対怒られてない?もうそろそろ慣れてきたでしょ」


少しからかうつもりでそう聞いてみる。

「慣れるもんか!怒られるのは俺だって嫌だよ。とは言ってもなんやかんや結局怒られちゃうんだけどね」

ふっと口から笑みを零しながら答えるその言葉には、どこか寂しそうな色がまとわりついていた。

「え、意外。なんかいつも怒られても笑ってたから」

「いやあ、それは…あ、もうあんまり時間ない、早く片付けようぜ!」

永田くんがバツが悪そうに顔を顰めて、分かりやすく話題を切替える。

「そうだね!」

なぜここで話をそらしたのか、本当はものすごく気になったけれどそれを聞く勇気は無いので、私は素直に片付けに取り掛かることにした。

そうして全ての実験器具の片付けを終えて、最後に実験結果をまとめていると、あることに気がついた。

(あれ、永田くんの字……)


「唯さー?今日の朝、晴来と喋ってた?」

4時間目が終わり、お弁当を一緒に食べていると唐突に咲希に聞かれた。

晴来というのは永田くんのことで、二人は仲がいいから、いつも下の名前で呼びあっている。

「あ、うん。でも喋ってたっていうよりは永田くんが私の机にぶつかって、そっから喋りかけられたってだけ。永田くんあの性格だし」

「ふーん。そっかぁ、唯は好きとかじゃない?晴来のこと」

「えええ、流石にないよ。ほとんど喋ったことないし。今日だって、ほんとにたまたまだから」

有り得ない事を聞かれ、驚きながら否定する。

「じゃあいっか」


咲希は私の答えを聞くなりそう言って、座っている席を立って私の耳元まで近づいてくる。

そして、そのまま囁き声で喋りかけてきた。
「私ね、晴来のこと好きなの」


咲希から発せられた言葉が、甘酸っぱいいちごとなって私の鼓膜を揺する。

「ええええ!?な、永田くん!?」

「しー!しーだってば!唯の声でかい」

私を必死に止める咲希の顔は真っ赤で、温度は今の太陽よりも高そうだ。

「いつから好きなの」


今度は先程よりも小さな声で聞いてみる。

「最初は何となく喋ってたんだけど、一緒に居たら楽しいって思い始めちゃって。しかもこの前私が提出物運んでる時、何も言わずに手伝ってくれたの!それくらいから、何してても晴来のことが頭から離れなくなっちゃった」

恥ずかしそうに。でもちょっぴり嬉しそうに発された咲希の言葉は、薄桃色の綿菓子となってふわふわと宙を舞う。

私はゆっくりと自分の右掌を見つめた。

まさか咲希が永田くんのことが好きだったなんて。

確かに咲希と永田くんはよく話していて仲もいいけれどそれは二人ともが誰にでも話しかけられるタイプの人だからだと思っていた。

でも、違ったんだ。

今の咲希は明確な好意を持って永田くんと喋っている。

その事を知って、なんだか今日の出来事に罪悪感を覚えてしまう。

永田くんは咲希にもあんな風に軽々しく手を握ったりするのだろうか。

「唯?どうした?」

しばらく考えていると、怪訝そうに咲希に顔を覗かれたので、

「咲希ならいけるよ!永田くんと仲いいし!」
と言って誤魔化しておいた。

すると咲希は

「へへえ、そうかなあ」

と心底嬉しそうな顔をして答えていた。

それからはずっとこの話で盛り上がって、どうしたら永田くんを落とせるかとか好きなタイプはどうだなんて話をしていたらいつの間にか昼休み終了五分前のチャイムが鳴っていたので、私達は話を終えて次の授業の準備に取りかかる。


「人を好きになるってどんな感覚だったか、覚えてないなあ……」

ひとりでにそんな言葉が口からついて出る。

私は久しく恋をしていない。

人と話す機会が少ないというのもあるし、それにどうしても翼に対する申し訳なさが勝ってしまう。

ある日、翼が顔をほんのりと赤らめながら、お友達を連れてきたと言って春菜ちゃんという女の子を家にあげていたことがあった。

あの時は本当に吃驚したのを今でも覚えている。

翼はそれまでに何度も好きな子がいると言っていた。

もちろん名前も聞いていたし、こっそりクラス写真を持ってきて、この子だと教えてくれたこともあった。


だから、あの時のことを思い出すと私が恋愛なんてできるはずもないと、してはいけないと、そう思うようになっていった。

大切な人を守れなかった私が、翼の幸せを守れなかった私が幸せになる資格なんて持っているはずが無い。

その戒めだけが、自分のやるせない気持ちをぶつけられる唯一の場所。だから、私は今も恋をしていない。


――姉ちゃん!

夏の暑い日。私は、家の近くにあった川に翼と一緒に来ていた。

照りつける太陽は何よりも輝いていて、いつか流れる水を沸騰させてしまいそう。

「翼ー!早く!遅いよ!」

「姉ちゃんが速いんだよー!」

後ろでは翼が私のことを必死に追いかけながら叫んでいる。

すると、翼が勢いよく川に潜ってクロールをし始めた。

どうやら私を追いかけてきているらしい。それから逃げるように、私も川の流れに逆らって泳ぐ。

私達はどちらも同じスイミングスクールに通っていて、泳ぐことが好きだった。

でも私の方が泳ぐのが速くて、それがちょっとした自慢だったりもした。

それから自慢の泳力で一時間ほど水中鬼ごっこをしていると流石にどちらも疲れて、河原に上がって休憩をとった。

……ぽんっ


弾ける音と共に飛び出たのは甘いラムネのお菓子。

私達はこの川に来る度に、このラムネを持ってきては口いっぱいに頬張っていた。

「はい、姉ちゃんの分」

翼が私の手に出してくれたラムネを口元に運ぶ。

川の水で無味だった口の中にいきなり放り込まれる強い甘味。

ほっぺたが痛くなるこの時が、最高に幸せだ。

「美味しいー!あまーい!」

突然翼が叫び出して、声が辺りに響き渡る。

「あははっ。何それ」

美味しくて甘いのはその通りだし、私もそれにはものすごく共感している。

けれど、どうしても翼の前では少し大人ぶった口調になってしまう。

「えー!だって叫んだら美味しいの皆に伝えられるよ?」

無邪気な笑顔を見せながら真剣に話す翼が面白くて、でもそれに納得して私も叫ぶ。

「お空きれーい!ラムネおいしーい!翼のバーカ!」

「はあ!?最後のは広めなくていいでしょ!」

私の叫びを聞いて抗議する翼。

「あはっ。皆に翼のこと教えておいてあげたよ」

それを聞くなり翼は立ち上がって、思いっきりあたりの空気を吸い込んで

「姉ちゃんのあほー!」

と叫んでいた。

私はさらに反撃するために河原から川に戻り、水しぶきを翼にかける。

「あー!やったなー!」

翼も川に走り込んできて、私の攻撃に応酬する。

「姉ちゃんのあほー!」

「翼のバーカ!」


そう言いながら、お互いに水をかけあっていると翼のかけた水からキラキラとした何かが目の横を通り過ぎていった。

驚いてそちらに目を向けると不思議な形をした小さな虹色の入れ物が静かに佇んでいた。

「なにこれめっちゃ綺麗!」

寄ってきた翼が興味津々に眺めている。

そのまま触ってみたり、振ってみたりするがなんの変化もない。

「ねえ見て姉ちゃん、この入れ物蓋がついてるよ」

「ほんとだね。開けてみちゃおっか」

パッと見では分かりにくいけれどじっくり見ると少し上の部分に切れ目が入っているのがわかる。

恐る恐るといった様子で翼がその蓋を開けるとラムネの入れ物と同じようにぽんっと音が鳴った。


それを聞いた翼は目を丸くして

「なにこれ!ちょー面白い!ねえ!これ持って帰ってもいい!?」

と聞いてきた。

「え、いるの?それ」

「うん!欲しい!なんか面白いもん!」

私は少し考えるふりをしてから、一緒にその入れ物を持って帰ることにした。


(そういえばあの時って入れ物の中に何入れたんだっけ…翼が何か入れてたような気もするけど、上手く思い出せない)

「――そんなことをする人は居ないと先生は信じています。それでもこの学校で実際に起きていることです。もし心当たりがある人はどの先生でもいいので名乗り出てください」

前を見ると目の前では画面越しに、学年主任の先生が何か話をしていた。

ああ、そういえば今はリモートでの学年集会の途中だったんだ。どうやら途中で睡魔に負けてしまっていたらしい。


推測するに通称窓ガラス事件のことだろう。最近私の学校では原因不明の窓ガラス損壊事件が多発していて、生徒の間でそう呼ばれている。正直私には関係の無いことだ。

「次は夏休みの過ごし方についてです」

(ああ、もうすぐ夏休みか)

学校が休みなのは単純に嬉しいけれど、結局部活やら夏季補習やらで休みが潰れていくと部活の先輩が言っていたような気がする。

「注意点は三つあります。川や海に遊びに行く時は気をつけること。非行をしないこと。SNSの仕様には十分注意すること。以上」


学年主任の先生はいつも話が短くて本当に助かっている。

おかげで学年集会もすぐに終わりそうだ。

「 姿勢を正して、礼」


ようやく最後の六時間目の授業が終わって、私は身体をぐぐっと上に伸ばす。

体からぽきぽきと音が鳴った。

相当凝り固まっていたのだろう。

そうして身体を解すとさわがしい教室を後にして、部室へと向かう。

私はスイミングスクールに入っていることもあって、そのまま水泳部に入った。

今もスイミングスクールと水泳部を掛け持ちして毎日泳いでいる。

学校の部活は結構自由なので、その日の気分で部活に行くかスイミングスクールに行くかを決めることができる。

今日は部活に行きたい気分だったので部活に行くことにした。


「ありがとうございました!」
なびく夕陽の影を背景に、プールに向かってお礼を告げる。

部活が終わって、ようやく学校から開放される時間だ。

まあ、家に帰りたいかと言われればそうでは無いのだけれど。

それから着替えを済ませて更衣室を出るといつの間にか太陽はいなくなっていて、辺りは一面生暖かい夜に包まれていた。

空に浮かぶ月と星のコントラストは夜の太陽と言っても差し支えないほどに美しい。

そうしてしみじみと夏の夜を感じているといきなり誰かに声をかけられた。

「なんで来てくれなかったんだよ」

驚いて振り返ると、そこには部活終わりの息を切らした永田くんがいた。

「え、?なに……?」


いきなり問われた私は、なんのことかさっぱり分からずに目を細めながら聞き返す。

「なにって、体育館裏」

言われた瞬間、今日の記憶が私の頭の中を駆け巡る。
思い出されたのは、一枚の紙切れ。

「あ、本に挟まってた手紙の……やっぱりあれ永田くんだったんだ」

思い出した。本を開いた時に現れた‪”‬体育館裏で待つ‪”‬の文字。

「そうだよ。わかってたならなんで来てくれなかったんだ」

怒っているというよりは、初めから私が来ないことは予測していたという様子で私を問いただす永田くん。

それに私は口篭りながら返事をする。

「すっかり忘れてて。ごめん」

嘘をつく理由もないので、正直に話す。

「いや、俺の方こそごめん。こんな呼び出し方良くなかったよな」

「ううん、大丈夫だよ。さすがにびっくりはしたけどね」


永田くんが申し訳なさそうな顔をするので、できるだけ気にしてないという風にして言葉を紡ぐ。


どこか気まずい風が吹いて、少しの間、静寂が私たちを包んだ。

揺れる木々と昇降口から聞こえる人の声がやけにに大きく聞こえる。

「誰かに見られるとまずいし、一旦学校出るか」

永田くんも昇降口の人の声に気がついたのだろう。そう言って、私達はどちらからともなく校門に向かって歩き始めた。

「ここら辺で大丈夫?」

「うん」

学校の近くの公園に来た私達は、長いベンチに並んで腰をかけて話し始める。

何か話し始めるのを躊躇っているのか、永田くんはどこか落ち着かない様子で座っている。

それから隣で深く息を吸う音が聞こえて、

「唯」
名前を呼ばれる。

「なあに?」

私が聞き返すと同時に、ぽつりと地面が湿る。

暗かったからしっかりは見えなかったけど、確かに地面の一部が暗くなった気がした。


すると、暗くなった地面の部分はどんどん増えていって、やがて足下の辺り一帯が地面の色を変えてしまった。


その正体が何なのかを知ったのは鼻をすする音に、横を向いた時だった。

隣に見える永田くんの顔はプール上がりと見間違える程に濡れていて、目はものすごく細くなっていた。

「永田くんが、泣いてる……え、どうしたの……」


驚きのあまり、思ったことがついて出る。

「……めん、ごめん」


何故か何度も謝る永田くん。ごめんの文字が空中で雨雲となって、永田くんの上に降りかかる。

隣で泣きじゃくるその様子は、どこか無邪気で大人っぽくも感じた。

それからしばらく経って、少し落ち着いてから彼は徐に話し始めた。
「俺、唯に沢山謝らなくちゃいけないことがあるんだ」

途中で鼻をすする音が、私の耳をつんざく。

「まずは、今日のこと色々含めて、ごめん」

「いや、それは私も謝りたくて。理解の時間、私のせいで永田くんまで怒られちゃって、ごめん。あと社会の授業中助けてくれてありがとう」


確かに驚いたことも沢山あったけれど、別に嫌だとは思っていないし、むしろ少し楽しかった。

それに、もう永田くんには昨日ほどの嫌悪感を抱いていない。

それを伝えるべく、私は謝礼を述べた。
「てかなんであの時助けてくれたの?」

社会の授業の時間に永田くんが助け舟を出してくれたことを思い出して聞いてみる。

「それは……唯が笑ってたから。唯、普段あんまり笑わないし、授業中に笑ってるの見たら、無意識のうちに声出しちゃってた。なんで歴史の教科書があんなに面白いのかは俺には全くわかんないけど」

「私が笑ってたから……?」

永田くんが言っていることにいまいち合点がいかず聞き返す。

「別に変な意味とかじゃなくて、いや、変なことと言えば変なことなんだけど、俺、人の泣いたり笑ったりするところを見るとその人と同じ気持ちになれるんだ」

「感受性が高いってこと……?」

「ううん。そういうのじゃなくて、なんて言うか……その人の胸の辺りから霧みたいなものが飛び出てきて、それを取り込むと全く同じ気持ちになれるの。えっと、だから、その……魔法、みたいな……?」

「え、?永田くんて厨二病?」

「ち、違うわ!」


あわてて否定する永田くんに思わず笑ってしまう。

内心すごく驚いた。

(私以外にも魔法を持ってる人がいたんだ……)

「時間取っちゃってごめん。もう暗いし、残りの話しは明日にしてそろそろ帰ろうぜ」

そう言って永田くんがベンチから立ち上がったので、私もそれに続いて立ち上がる。

「それじゃあ、私こっちだから」

そう言ってきびすを返すと、右肩をくいっと引っ張られた。

振り返ると永田くんが私の手、ではなく、制服の裾の部分を掴んでいる。

「もう暗いし、危ないだろ。唯が嫌じゃなかったら家まで送ってくよ」


聞こえた声が、いきなりさくらんぼの形に変化してわたしの胸に飛び込んでくる。

「大丈夫だよ。ここからすぐだから」

「そっか、わかった。今日はありがとう。じゃあまた学校で」


納得したように永田くんは手を振って、私とは反対方向に歩いていく。
それに手を振り返してから、私は一人で胸を押さえつける。

(何これ……胸が、痛い)

さくらんぼの形になったあの言葉が聞こえてから、ズキズキと痛む。


私が永田くんの誘いを断ったのは、家が近いからでは無い。割と家はここから遠くて、正直言えば一人で帰るのはかなり怖い。


でも、それ以上にこの痛みが広がることが怖かった。

だから、これが治まるまで、なんだか永田くんの近くにいてはけない気がして、誘いを断ってしまった。


それから、ある程度痛みが引いてから私は歩き出す。まだ途切れることなく夜空には星月が輝いている。

そういえば永田くんは私に沢山謝ることがあると言っていたけれど、他には何を謝ることがあるのだろうと考えてみたもののそれは何だか野暮な気がして、気にしないでおくことにした。















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