甘い夢はもう見ない〜お見合い結婚から始まる両片想いの恋〜
驚きの事実
日本に帰国すると、羽田空港に戸部が迎えに来ていた。

「奥様ー!」

嬉しそうに桜子に手を振る戸部に、左京はあからさまにムッとする。

「奥様、お帰りなさい! お元気でしたか? 旅行はいかがでした? この3週間、すごく寂しかったんです。またお会い出来て本当に嬉しいです」

前のめりな弾丸トークに、桜子は苦笑いを浮かべた。

「あ、はい。元気でした。旅行はとても楽しかったです。戸部さん、お迎えに来てくださってありがとうございます。お土産、色々買ってきましたよ」
「ほんとですか!? なんてお優しい! そのお気持ちだけで充分です」

すると左京が、桜子に迫り来る戸部の顔を、ガシッと手のひらで押さえた。

「そうか。じゃあ気持ちだけ受け取れ」

もう、左京さん、と桜子が止める。

「戸部さん、うちまで運転よろしくお願いします」
「奥様の為なら喜んで! さぁ、行きましょう」

スーツケースや荷物をたくさん載せたカートを押して戸部が振り返ると、左京は桜子の肩をグッと抱き寄せた。

「戸部。俺の桜子に話をする時は、俺を通せ」
「は? 常務、なにをおっしゃいますか?」
「うるさい、言う通りにしろ」
「はいー? 意味が分からないです。ね、奥様」
「だから、桜子に直接話しかけるなと言っている!」

戸部は小さく「やれやれ、燃えさかるヤキモチ」と呟く。

「戸部!?」
「今のはひとり言でーす」

戸部は桜子に肩をすくめてみせると、カートを押して歩き始めた。
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