前世の婚約者は王太子殿下でした
 オスカーが感慨深げに中庭の花壇へ視線を移す。
 光沢のあるドレスの生地は、紫苑の花と本当によく似た薄紫色だった。

「これを着て、ふたりで国王陛下にお目通りしよう。正式に結婚すると報告しに」

 自分のような身分の低い者が王太子妃に?
 そんなことはありえないと思う反面、オスカーから真剣な眼差しを向けられたら、レーナは迷うことさえ許されない気がした。
 彼が誠実なのはよく知っているから。前世で煌太郎だったときも、全身全霊で桜和を愛し、守ろうとしていた。

「もう二度と離れたくないんだ」

 オスカーが愛しそうにレーナの頬をなでる。

「私もです。この先は、ずっとそばにいます」

 レーナをぎゅっと抱きしめたオスカーは、コツンと額を合わせて微笑む。
 やっと手に入れた幸せを噛みしめていた。

「ありがとう、レーナ。心から愛している」

 互いに溢れんばかりの恋情を捧げるように、ふたりは深い口づけを交わした。

 この先どんなことがあっても、ふたりなら乗り越えていけるだろう。
 秋麗(あきうらら)に咲く紫苑と共に。


――――END.
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