オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ
けれどそのあとは、切ない思いが私の心に蓋をした。
少し離れた場所で、翼と美咲が並んで歩いているのが目に入って。
バケツを片手に、潮に濡れた砂浜を軽やかに進んでいく二人の後ろ姿が、ずきりと胸を突き刺す。
「見て、こっちのほうが大きいの取れるよ!」
美咲が嬉しそうに貝を掲げると、翼が身をかがめてのぞき込んで笑った。
「ほんとだ。さすがだな、美咲」
微かに聞こえてくる声は、いつもの柔らかい声で、また胸の奥がもやりと嫌な音を立てる。
そのとき、美咲の足がぬかるみに取られて、ぐらりと揺れた。
「わっ!」
迷いなく伸びた手が、美咲の腕を支える。
「ばか、大丈夫か?」
「ありがと」
「気をつけろよ。転んだら大漁どころじゃなくなるぞ」
腕を掴んだまま、二人はそんな風に会話をしていた。
「うん、気をつける」
顔を見合わせて、二人は笑った。
そのやりとりはあまりにも自然で、長い時間を重ねた人たちだけが持つ、揺るがない距離の近さがあった。
……やっぱり、あの間には入れない。
そう思った瞬間、せっかく少しだけ開きかけていた心が、静かに閉じた。
翼は分かってくれるなんて……そんなふうに思っちゃだめだ。
翼は誰にでも優しい。
転校してきた私を、気にかけてくれているだけ。
何度も心の中で繰り返すけれど、胸に浮かぶ寂しさはなかなか消えてくれなかった。
そこまで思い出して、私ははっと瞬きをした。
胸に広がった苦い感情を、私は小さく飲み込むように息を吸う。
今回は、あのときみたいに自分から心を閉ざしている場合じゃない。
思い出に浸るために戻ってきたわけでもない。
あの日、見落としたものを、ちゃんと見る。
私が知らなかった翼をちゃんと知る日にするんだ。
少し離れた場所で、翼と美咲が並んで歩いているのが目に入って。
バケツを片手に、潮に濡れた砂浜を軽やかに進んでいく二人の後ろ姿が、ずきりと胸を突き刺す。
「見て、こっちのほうが大きいの取れるよ!」
美咲が嬉しそうに貝を掲げると、翼が身をかがめてのぞき込んで笑った。
「ほんとだ。さすがだな、美咲」
微かに聞こえてくる声は、いつもの柔らかい声で、また胸の奥がもやりと嫌な音を立てる。
そのとき、美咲の足がぬかるみに取られて、ぐらりと揺れた。
「わっ!」
迷いなく伸びた手が、美咲の腕を支える。
「ばか、大丈夫か?」
「ありがと」
「気をつけろよ。転んだら大漁どころじゃなくなるぞ」
腕を掴んだまま、二人はそんな風に会話をしていた。
「うん、気をつける」
顔を見合わせて、二人は笑った。
そのやりとりはあまりにも自然で、長い時間を重ねた人たちだけが持つ、揺るがない距離の近さがあった。
……やっぱり、あの間には入れない。
そう思った瞬間、せっかく少しだけ開きかけていた心が、静かに閉じた。
翼は分かってくれるなんて……そんなふうに思っちゃだめだ。
翼は誰にでも優しい。
転校してきた私を、気にかけてくれているだけ。
何度も心の中で繰り返すけれど、胸に浮かぶ寂しさはなかなか消えてくれなかった。
そこまで思い出して、私ははっと瞬きをした。
胸に広がった苦い感情を、私は小さく飲み込むように息を吸う。
今回は、あのときみたいに自分から心を閉ざしている場合じゃない。
思い出に浸るために戻ってきたわけでもない。
あの日、見落としたものを、ちゃんと見る。
私が知らなかった翼をちゃんと知る日にするんだ。