One year left -家族ごっこ-
「萩花ちゃん、今日も彼氏のお迎えだよー!」


更衣室で着替えていると、ダンススクールの子たちが弾んだ声を上げて私を呼びにくる。


「……わかった」


あえて素っ気なく返してみたけれど、彼女たちの熱量が引く気配はない。


「ねえ、いいなぁ。合月くんって二人きりだとどんな感じ?」


「今日はどこかに寄って帰るの?」


「っていうか、もうキスとかはした!?」


目を輝かせた女の子たちに囲まれ、またいつも通りの果てしない質問の雨を浴びる。


助けを求めて夕紗たちのほうへ視線を投げたけれど、みんなただ傍観しているだけで、一歩も動いてくれない。


冷ややかすようなその瞳からは、私たちにもずっと隠してたんでしょ、という静かな意地悪が透けて見えた。


すべての原因である碧くんは、ゴールデンウィークが明けてからというもの、毎週のように私のレッスンをスタジオの大きなガラス窓の外から眺めるようになった。


そして終わる頃には、出入り口の特等席でドンと構えて私を待っている。


そんなことをされれば、いくら“ただの義理の弟”だと弁解したところで、誰も信じてくれるはずがない。


噂は生き物のように他校へとしみ出し、私はいつの間にか、“合月碧の彼女”として、すっかり有名になってしまっていた。


こうなってしまっては、どんなに否定の言葉を並べても広まるスピードには到底追いつかない。


私はもう、ため息をついて諦めるしかなかった。
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