王子は姫を愛して止まない
姫乃が当時のことを覚えている素振りはなかった。

気付いていたとは思わなかった。

「忘れるわけないよ。けど、最初は実風くんがあの時の人だったとは思わなくて、少しずつ重なった」

「そう、だったんだ…」

だけど、心外だ。
姫乃は俺の気持ちをだいぶなめていた。

この重い感情の片鱗を見せないように気を付けすぎたのかもしれない。

「…俺が今の姫乃は好きじゃないと思うの?」

「っ…」

ぽろぽろと大粒の涙が姫乃の大きな目から溢れてこぼれる。
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