なんでもひとつだけ金にする
あるところに、無一文で住む家もなく、路頭に迷っていた男がいた。

神様は、そんな男を哀れんだのだろう。ある時、男の前に現れこう言った。

「お前が手に持っているものを、なんでもひとつ金にしてやろう」

それを聞いた男は大喜び。しかし次の瞬間、はたと困ってしまった。

金にしてもらうためには、元となる何かが必要だが、無一文で家もない男には、その他の持ち物もまるで持ち合わせていなかったのだ。

ならばと、男は道端に落ちていた石を拾う。これなら、勝手に持っていっても問題ないだろう。

この石を金にしてくれ。そう神様に頼もうとした。
だが、そう口にする直前で考えなおす。
どうせ金にしてもらうなら、今持っているような手のひらサイズの小石ではなく、もっと大きい方がいい。

大きな石を探さなくては。
そう思い辺りを見回すが、特別大きな石など、都合よく落ちてはいない。
ならばと、近くの山の中に入って探すが、そのうち神様もだんだんと待ちくたびれてきた。

「おい。まだか?」
「あ、あと少しだけ待ってくれ!」

ここで神様が帰ってしまったら何にもならない。
男が焦ったその時、両手でやっと抱えられるくらいの大きな石を見つけた。

これだ。こいつを金に変えてもらおう!

急いで大きな石を抱える男。
だが、慌てて持ち上げたのがまずかった。胸くらいまで持ち上げたところで男は足を滑らせ、そのまま仰向けに転倒する。

「痛たたた……」

強く体を打ち付け、痛がる男。それでも、石は手放すことなく、胸の上に乗せた状態で抱えていた。

それだけ大きな石だから、当然重い。潰れそうなくらい重い。
しかし男は、早くこの石を金に変えてもらおうと夢中だった。
倒れたまま、早く神様に向かって、力いっぱい叫ぶ。

「たのむ! この石を金にしてくれーっ!」

男の願いを聞き入れた神様は、抱えていた石を金へと変えた。





【解説】

金は石より遥かに重く、同じ大きさの場合、6〜8倍の重さがあるという。
胸の上に乗り、ただでさえ潰れそうなくらい重かった石が、さらにそれだけ重くなったらどうなるか。
石が金になった瞬間、男は命を落とすことになるだろう。
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