その溺愛、気づいてます!〜非鈍感な地味子の溺愛生活〜
第2話:地味子、まさかのファンクラブ大歓迎

翌朝、私は指定された制服に身を包み、高等部校舎へと足を踏み入れた。
 三つ編みに瓶底眼鏡。お世辞にもこの煌びやかな学園に馴染んでいるとは言えない姿。

(さあ、どんな洗礼が待っているのかしら。無視? それとも、教科書を隠されるとか?)

私は胸ポケットに忍ばせたボイスレコーダーと、脳内の「ネタ帳」を準備する。
 いじめ、格差、孤立――小説のリアリティを増すための『負の感情』を採取する絶好のチャンス。

私は職員室に行き、先生に挨拶をした。

そして私は自分の教室に先生と向かった

私は震える手つきを演じながら、1年A組の教室のドアなをそっと開けた。先生は先に入った。

「みんな静かにしろー!今日は編入生が来たぞ!」
クラスが一瞬ざわついた。
「……あの、今日から編入してきた、神崎 零です……」

教室内が一瞬で静まり返る。
 突き刺さるような視線。令嬢たちが扇子を広げ、
御曹司たちが冷ややかな目で私を見る……はずだった。

「……え、ちょっと待って」
「その鞄についてるキーホルダー……まさか、限定品の!?」

一人の女子生徒が立ち上がり、私の元へ駆け寄ってきた。というか最初に注目するのそこっ?!あと観察力すごいなっ…
 彼女が指差したのは、私が愛用している地味な黒い鞄。そこには、私の小説のノベルティで作った、非売品の小さな栞型のチャームが揺れていた。

「それ! 天才作家・雨弓先生の初版限定イベントで、抽選30名にしか配られなかった伝説のチャームじゃない!?」
「えっ、あ、はい。……古本屋で見つけて(嘘)」

私がしどろもどろに答えると、教室内が沸騰した。

「君も!? 雨弓先生のファンなの!?」
「実は私、皇瑞学園内の『雨弓先生私設ファンクラブ』の幹部なのよ!」
「僕もだ! 先生の最新刊の心理描写について、いつでも語り合える仲間を探していたんだ!」

……予想外すぎる。
 いじめるどころか、クラスメイトたちがキラキラした瞳で私を取り囲んだ。

どうやらこの皇瑞学園、高IQのエリートばかりが集まっているせいで、娯楽に飢えていたらしい。彼らにとって、複雑なトリックと高尚な語彙を操る「小説家・雨弓」は、もはやアイドルのような神格化された存在だったのだ。

「神崎さん、雨弓先生のどこが好きなの!? 教えて!」
「え、ええと……。……物語の構成が緻密で、特に……三章の伏線回収が、見事だと思います……(自分のことだけど)」

私が少し詳しく語るたび、「それな!」「理解が上級者!」と拍手が巻き起こる。確かに私の感想歯上級者向けかも(自分のことだから)
 地味子として疎外されるはずが、私は一瞬にして『雨弓先生を語れるカリスマ信者』としてクラスに受け入れられてしまった。

「決まりね。神崎さん、今日からあなたは私達の『同志』よ!」

……あてが外れた。
 ネタ探しのために地味子になったのに、これじゃあ観察どころか、中心人物になってしまう。

困惑する私を遠くから見つめる、一人の視線に気づく。
 教室の隅、昨日廊下ですれ違った生徒会長・一ノ瀬湊が、頬杖をついてこちらを見ていた。

(……なんだろう。こっちをじっと見つめてくる。)

湊は立ち上がり、ゆっくりと私の方へ歩いてくる。
 クラスメイトたちが道を譲る中、彼は私の目の前で止まり、瓶底眼鏡の奥にある私の瞳を覗き込んだ。

「神崎零、だったか。……君、面白いね。あんなに熱心なファン達に囲まれて、心拍数一つ乱れていない」

彼の低い声が耳元で響く。
 非鈍感な私は、すぐに気づいた。
 この視線は、単なる興味じゃない。……獲物を見つけた「捕食者」の目だ。

(……予定変更。いじめの観察は無理そうだけど、この生徒会長の『執着』になりそうな目は、いいネタになりそうね)

私は眼鏡を指で押し上げ、心の中で静かにシャッターを切った。
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