破天荒ガール、世界を殴る。〜聖剣強奪!女の子を泣かせた奴は全員ぶっ飛ばす〜

【第7話:深淵断罪(アビス・ブレイク)で庭掃除。魔王、とんでもない馬鹿を拾う】

【第7話:深淵断罪(アビス・ブレイク)で庭掃除。魔王、とんでもない馬鹿を拾う】


「おはよう、サタンブレイド。今日から僕たちの、闇の伝説が始まるんだ!」

​アレスは与えられた漆黒の客室で、かつてないほど心地良い朝の目覚めを迎えた。
ふかふかのベッド、清潔な寝間着。何より、自分を〝必要だ〟と言ってくれた主の存在が、彼の心を支配していた。

『おはよう、アレス。……朝から暑苦しいわね。まあ、昨日よりはマシな顔してるけど』

​腰に下げた魔剣は、鈍い黒光りを放ちながら、小さく気だるそうに声を漏らした。

「ふふ……主からの最初の任務だよ。きっと、壮大な闇の試練に違いない!」

『その自信、どこから来るのかしら……』

​アレスは意気揚々と謁見の間へ向かった。
玉座に座る魔王ユピテルは、朝の光の中でも相変わらず冷徹で美しかった。彼は手元の書類から顔を上げ、広大な窓の外を指し示す。

「……アレスか。我が騎士よ。まずはこの城に馴染んでもらわねばならん。……庭の整備をしておけ」

「に、庭の整備……。なるほど!外部からの侵入者を防ぐための、罠の設置ですね!?あるいは、闇の植物を育てるための儀式を……」

「いや、ただの枝落としと草むしりだ。伸び放題だと見栄えが悪い。……頼んだぞ」

​ユピテルはそれだけ言うと、再び書類に視線を落とした。
アレスは「これが闇の試練……主の美学を理解するための修行か!」と勝手に解釈し、鼻息を荒くして庭園へと飛び出した。

『……人の話、ぜんぜん聞いてないわね、この子』

​サタンブレイドの呆れた声が響く。



広大な城の裏庭には、確かに手入れの行き届いていない茂みが広がっていた。
アレスは魔剣サタンブレイドを勢いよく引き抜く。

『ちょっと待ちなさい。どうして今、私を抜いたの』

「見ていてください、魔王様!この庭に、新たな〝闇の秩序〟を刻んでみせます!」

​アレスはまず、高く伸びすぎた生垣の前に立った。普通なら剪定バサミを使うところだが、彼は魔剣を上段に構える。

「喰らえ!深淵断罪(アビス・ブレイク)!!」

『聞きなさいよ!!』

​黒い魔力が剣身に宿り、鋭い斬撃が乱舞する。
シュバババッ!という凄まじい音と共に、生垣は一瞬で細切れになった。
勢い余った衝撃波は、その背後にあった魔王お気に入りの大理石の噴水まで、無残に真っ二つに叩き割った。

「ふむ。少し威力が強すぎたか。だが、この圧倒的な更地感……これこそ闇の力!」

『ねえアレス、庭って言葉の意味、知ってる?』

​次に彼は、地面に生い茂る雑草に目をつけた。一つずつ抜くのは効率が悪い。アレスは剣を地面に突き立て、魔力を流し込む。

『嫌な予感しかしないわ』

「雑草ごと、すべてを根絶やしにしてくれる!地の底より這い出せ!深淵残火(アビス・エンバー)!!」

『やめ――』

――ドゴォォォォォォンッ!!!

​黒い爆炎が地面を焼き、雑草は一瞬で炭化した。
しかし、その熱波は隣に植えられていた希少な〝月光バラ〟の苗まで焼き尽くし、庭園の半分は、爆撃を受けた後のような無惨なクレーターと化した。



​数刻後。
作業を終えたアレスは、ホコリまみれになりながらも、やり遂げた表情でユピテルを庭へ案内した。

「魔王様!ご覧ください!邪魔な障害物をすべて排除し、徹底的な平穏(更地)をもたらしました!」

『……私は止めたからね、本当に』

​そこにあったのは、整備された庭園ではなく、終末戦争の跡地のような風景だった。
壊れた噴水、黒焦げの地面、そして無惨に散ったバラの花びら。
ユピテルは、その光景を無言で数秒間見つめていた。その美しい顔が、わずかに引きつっている。

「……アレス。お前、これは……何をした?」

「闇の剪定です!軟弱な緑など必要ありません、この荒野こそが魔王城に相応しいかと!」

『言い切ったわね』

「……私は、普通に、ハサミで切って欲しかったんだが。……あと、その噴水は貴重な魔導具……」

​ユピテルは深く、深いため息をつくと、こめかみを指で押さえた。

「……やり直しだ。今度は剣を使うな。素手で、一草ずつ、心を込めて抜け。……いいな?」

「えっ!?……は、はい!素手での修行ですね!承知しました!」

『修行じゃないから!』

​アレスは「なんと厳しい試練だ……!指先の感覚を研ぎ澄ませろということか!」と、またしても明後日の方向に感動しながら、泥だらけになって四つん這いになり始めた。

それを見下ろしながら、ユピテルはポツリと独り言を漏らした。

「……とんでもない馬鹿を拾ってしまったかもしれん……」

『……同感です、我が主』

​アレスの〝闇の勇者〟としての道は、まだ一歩も前に進んでいなかった。



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