『薫櫻日和 ―私たちの春夏秋冬―』

第1章:新しい風第1話『桜舞う入学式』

春の光が、校門の桜を淡く照らしていた。私立薫櫻高校――通称「薫櫻(かおるさくら)」。今日からここが私の新しい学校生活の舞台になる。
「…はぁ、緊張するなぁ。」
私は制服のリボンをぎゅっと握りながら、小さなため息をついた。
周りには新入生がちらほら。友達同士で笑い合う声、先輩のはつらつとした挨拶、吹き抜ける春風。すべてが新鮮で、少し眩しい。
「高嶺さん、ですか?」
ふと声をかけられ振り向くと、クラスメイトらしき女の子がにこやかに立っていた。
「え、あ、はい…高嶺美紀です。」
言葉がぎこちなく出る。
「私、桜井結(さくらい ゆい)!よろしくね!」
結は手を差し出してきた。小柄で元気いっぱい、笑顔が太陽みたいだ。思わず私も微笑む。
「よろしく…」
ああ、ちょっと緊張がほぐれた気がする。
教室に入ると、すでに席はほぼ埋まっていた。私の席は窓際。外には満開の桜、淡いピンクの花びらが風に舞っている。
「わぁ…きれい…」
思わずつぶやいた声を結が聞いたらしく、横で笑った。
「でしょ?薫櫻の桜は特別なんだよ。毎年、入学式の日にちょうど満開になるんだって。」
私は少し心が弾むのを感じた。まだ始まったばかりなのに、この学校での生活が楽しみになりそうだ。
昼休み、校庭に出ると部活の勧誘で賑やかだった。軽音部、茶道部、演劇部…どの部も個性的な先輩たちが声を張り上げている。
「高嶺さん、見学に来ない?」
軽音部の先輩がギターを抱えながら誘ってきた。
「え、私、音楽…そんなに詳しくないですけど…」
心の中で思うけれど、少し興味はある。
「大丈夫!初心者も大歓迎だから!」
先輩の笑顔に押され、私は頷いた。新しい挑戦の予感。
その瞬間、校庭の隅から一際目立つ男子が通り過ぎた。制服姿の彼は、まるでステージ上のスターのように堂々としている。
「あの人…誰だろう…?」
心の奥がちょっとざわつく。
結が私の肩を叩いた。
「ほら、入学初日から恋の予感とか…?」
私は慌てて首を振る。
「ち、違うってば!ただ…気になるだけ…」
でも、どこかで自分も期待しているのを認めざるを得なかった。
桜吹雪の中、新しい学校生活が静かに、でも確実に動き出していた。
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