『薫櫻日和 ―私たちの春夏秋冬―』
第3話『初めての部活体験と秘密の告白』
放課後、結と私は軽音部の部室に足を踏み入れた。壁にはポスターやライブ写真がびっしりと貼られ、ギターやドラム、キーボードが並ぶ小さなステージが部屋の中央にある。
「わぁ…すごい…!」
思わず声が出る。結は目を輝かせ、部室の隅々まで見渡していた。
「初心者でも大丈夫だよ。楽しくやろう!」
先輩の声が響く。白いシャツに黒いベストを着た男子先輩――名前は天野翔(あまの しょう)。ギターを抱えた姿が、校庭で見かけたあの人気者だった。
「や、やっぱり…人気者なんだ…」
私は思わず小さく呟く。
結が肩を叩く。
「美紀、ほら!せっかくだし体験してみようよ!」
「う、うん…」
少し緊張しながらも、ギターを手に取る。弦に指を置くと、想像以上に軽くて少し安心する。
「最初はコードの練習からだね。美紀ちゃん、CとGを押さえてみて」
翔先輩が手取り足取り教えてくれる。
「C…G…う、うまく…できるかな…」
手が震える。
「大丈夫!最初は誰でもそうだから」
結も笑顔で励ましてくれる。隣にいるだけで少し勇気が出る。
しばらく練習を続けると、少しずつ弦の音がきれいに響き始めた。
「できた…!」
心の中でガッツポーズ。結も私を見てにっこり笑う。
「美紀、すごいじゃん!初めてでここまで弾けるなんて」
「う、うん…結が一緒だったからかも…」
自然と二人の距離が近くなるのを感じた。
練習が終わると、部室のソファで休憩タイム。部員たちの笑い声が部屋いっぱいに広がる。
「ねぇ、美紀…ちょっと聞いていい?」
結が真剣な表情で私を見つめる。
「え、何?」
「実は私…高校に入ってからずっと、美紀のことが気になってたの」
結の言葉に、私の心は一瞬止まった。
「え…?」
「うん。毎日一緒にいると、なんだかドキドキしちゃって…」
結は少し赤くなりながら言う。
私は言葉が出ない。胸の奥で小さな鼓動が早くなるのを感じた。
「そ、そんな…私も…ちょっと、ドキドキしてたかも…」
思わず素直な気持ちが漏れる。結が驚いた顔で目を見開く。
「え、本当?」
「うん、本当…!」
二人は顔を見合わせ、照れくさそうに笑った。周りの部員たちは気づかないように、静かに練習に戻る。
桜吹雪が校庭の窓から差し込む光にきらめく。美紀の胸の中には、新しい友情と、少しだけ甘いドキドキが混ざり合っていた。
「結、一緒に部活も、これからも…頑張ろうね」
「うん、よろしくね、美紀!」
桜の花びらが二人の肩にふわりと落ちる。新しい日々が、さらに鮮やかに輝き始めた――。