クラスの透明人間は、夜を駆ける怪盗でした
放課後。図書室で本を整理しながら、私は翼くんを待った。
次の手を打ってくるなら、今日のはずだ。
そして──『星の王子さま』を手に取ると、また手紙が挟まっていた。
周りを確認すると、誰もいない。
私は震える指で、手紙を開いた。
『怪盗ムーン様へ。
美術部の部室に、私が描いた絵が置いてあります。
来週のコンクールに出品する予定でしたが、部長が「レベルが低い」と言って、出品リストから外してしまいました。
あの絵は、私が三ヶ月かけて描いた大切な絵です。
コンクールの締切は、明後日。
部長は絵を部室の奥の部屋に隠してしまい、鍵をかけています。
どうか、取り戻してください。
今夜中にお願いします。
──美術部一年 藤井ゆりな』
読み終えて、もう一度、最初から読んだ。
何かが引っかかる。
本当に困っている人が書いた手紙なら、もっと感情が混ざるはずだ。「どうしよう」とか「ごめんなさい」とか。
なのに、この手紙は文章がきれいすぎる。
それに、「今夜中にお願いします」という急な指定。今までの依頼には、こんな制限はなかった。
これはきっと、罠だ。翼くんが仕掛けた、罠。
……怖い。でも──。
行こう。
罠なら、罠に乗ってやる。翼くんが仕掛けたなら、翼くんがそこにいるはずだ。だったら、私から会いに行けばいい。
私はポケットに手紙をしまい、頭の中で計画を組み立て始めた。