The One

そうして、文化祭が終わった。

さっきまでの賑やかさが嘘みたいに、
校舎の中は静まり返っている。

クラスの飾りも半分外されて、
どこか寂しい空気が漂っていた。


「……はぁ」

机に手をついて、小さく息を吐く。

疲れた。

でも、それ以上に——

終わっちゃった。

そんな気持ちの方が大きい。



「綾瀬、まだ残ってたのか」


後ろから声がして、振り返る。


「……先生」

小幡先生が、教室のドアのところに立っていた。


「片付け、もう少しで終わるので」


そう言うと、先生は中に入ってきて、

「手伝うよ」

って、言いながらダンボールを束ね始めた。


「え、でも——」

「他のクラス、ほとんど帰ってるぞ。1人より2人でやった方が早く終わるし」


断れなくなる。


「……ありがとうございます」

並んで、黙々と作業をする。

テープを剥がしたり、
机を元に戻したり。

会話はほとんどないのに、

——嫌じゃない。

むしろ、落ち着く。

ふと、同時に同じ箱に手を伸ばして。

指先が、触れた。


「……っ」

一瞬で引っ込める。

でも、さっき触れたところが、熱い。


「……悪い」

先生が小さく言う。

「いえ…」

声がうまく出ない。

気まずい沈黙。



「……終わったな」

先生がぽつりと呟く。

教室を見渡す。

さっきまでの華やかさはもうなくて、
いつもの景色に戻っていた。

「……ですね」

なんでだろう。

少しだけ、寂しい。
夢の中にいたような、不思議な感覚。まだ夢の中にいたいのに、現実に引き戻されたような…

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