The One


よかった、ってどこかで思ってしまう自分がいる。

2人で荷物を持って、教室を出る。

静まり返った廊下。

文化祭の余韻だけが、まだ残っている。


「重いか?」

「大丈夫です」

隣を歩く先生との距離が、やけに近く感じる。

何も話さないのに、意識してしまう。

階段を上る。


「あれ?」

ふと違和感に気づく。


「……先生、これ下じゃないですか?」



ゴミ捨て場は校舎の裏、下の階のはず。

なのに、今は上に向かっている。

先生は一瞬だけ足を止めて——



「……いいから来い」


それだけ言って、また歩き出す。


「え、ちょっ——」



理由も分からないまま、慌てて後を追う。

階段を上りきって、
屋上へ続く扉の前で先生が止まる。

ギィ…

重たい音を立てて、扉が開いた。
屋上なんて、立ち入り禁止のはず…


「……先生?」

一歩、外に出る。

少しひんやりした夜の空気。

校舎の上から見える景色。



そして——


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