The One
それでも意識は勝手に引き戻される。
エレベーターの中での停電。
文化祭。
何気ない日常に、光が差したように
奈桜の存在が、俺の心に入り込んできた。
子供のように素直で、可愛いところ。
純粋で、少しの事で赤くなるところ。
俺の事が好きだって、分かりやすすぎるくらい分かるところ。
数え出したら、キリがない。
いつの間にか、俺の方が…
無意識に息が詰まる。
思い出すな。
思い出すべきじゃない。
分かってる。
俺は教師で、奈桜は生徒。
絶対に、あってはならない。
スマホに視線が落ちる。
画面は暗いままなのに、奈桜が浮かぶ。
「何やってんだよ…」
自嘲みたいに、笑いが漏れる。
こんなところで、迷うなんてどうかしてる。
返さない。
それが、答えだ。
メッセージを削除しようと、スマホを開いた。
「奈桜…」
小さく、名前を呼ぶ。
声に出した瞬間、
もう誤魔化せないと知る。
奈桜は、ただの生徒じゃない━━━━━
指が動く。
止めようとしても、止まらない。
『俺も会いたい』
送った瞬間、小さく息を吐く。
やってしまった、と思うのに
どこかで、ホッとしている自分がいた。
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