甘すぎる溺愛は、美しい花の隣で。
「それで、実際どうなんですか。澪花さんとの距離は縮まったんですか?」

「澪花さんはまだ俺のことを恋愛対象としては、全く見ていないだろうな」

「大丈夫なんですか、それ……」

「大丈夫ではないだろ。でも澪花さんといると楽しすぎて、他のことを全部忘れるんだ。急かさずに澪花さんのペースに合わせたくなる」

「そのうち、他の男にさっさと取られますよ。澪花さん、綺麗ですし」

「…………」

俺の雰囲気に怒りが(まと)っていることに気づいて、坂井が「はぁ……」とわざとらしく大きなため息を吐いた。

「こんな一般的なことを言っただけで嫉妬しているようでは、澪花さんに見向きもされませんよ」

「……降りる。ここからは徒歩で行く」

「子供みたいなことを言わないで下さい」

「違う。渋滞していてこのままじゃ約束の時間に間に合わない。だから、走る」

「ここからだと割と距離がありますよ」

「分かっている」

坂井の二度目の大きなため息を背に車をあとにする。

降りた瞬間に、足に力を入れてスピードを上げた。

こんなに思いきり走るのはいつぶりだろうか。

走り疲れてそろそろスピードを落とそうと思った頃、駅の前で待つ澪花さんが人混みの隙間に見えた気がした。

それだけでまた足に力が入るのが分かる。
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