3年越しの片思い

言えなかった“好き”

直美は、高校三年生になったばかり。
隣の席の男の子に、三年間ずっと片思いをしている。
好きになったきっかけは、すごく単純だった。
入学してすぐ、落とし物をしてしまったとき。
誰も気にしていなかったのに、ただ一人、奏斗だけが一緒に探してくれた。

それだけで、好きになった。

「直美、おはよう」

「あっ、おはよう。奏斗君」

毎日交わす、当たり前の挨拶。
でも直美にとっては、それだけで少し特別だった。
この気持ちは、ずっと言えなかった。

でも――

「奏斗君、今日の放課後空いてる?」

「空いてるけど、どうしたの?」

少しだけ、息を吸う。

「……うん。話したいことがあるの」

声が、少しだけ震えていた。

「分かった。いつも俺が行く喫茶店あるから、そこ行こ」

「……うん」

――今日、伝えよう。

そう決めた。

放課後
「お疲れ。じゃあ、行こ」

迎えに来た奏斗と並んで歩く。
いつもと同じ帰り道のはずなのに、今日は少しだけ違って見えた。
心臓の音が、やけにうるさい。

喫茶店に入り、注文を終える。

向かい合って座る。

沈黙。
何を言えばいいのか分からなくて、言葉が出てこない。

――言わなきゃ。

そう思うのに、声が出ない。
そのときだった。

「今日はありがとう。急に呼び出してごめん」

先に口を開いたのは、奏斗だった。

「ううん、大丈夫……」

そう答えた瞬間。

「直美」

名前を呼ばれる。
顔を上げると、まっすぐ目が合った。

「直美が好きだ。付き合ってください」

――え?

一瞬、頭が真っ白になる。
告白しようと思っていたのに。
先に言われた。
嬉しすぎて、涙があふれる。

「……お願いします」

声が震えたまま、そう答えた。
それでも――
ちゃんと届いたと思った。
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