来年も、君と桜を。

名前も知らないのに

気づいたときには、教室の空気が少しだけざわついていた。


「え、大丈夫?」

「保健室行ったほうがよくない?」


クラスメイトの声が遠くで聞こえる。


(やば……目立ってる)


ぼんやりとした意識の中で、それだけは分かった。


「……平気、だから」

「無理してんじゃねぇよ」


低い声が、すぐ隣から落ちてきた。


顔を上げると、あの男子がまだ私の腕を掴んでいた。


「もういいです。離してください」

できるだけ冷たく言う。


でも、


「立てるならな」


あっさりそう返されて、言葉に詰まる。


「……」


悔しいけど、立てる自信がない。


それを見透かしたみたいに、

「ほら」

彼はため息まじりに言って、私の腕を引いた。


「ちょ、ちょっとーー」

そのまま立たされる。

ふらつく体を、また支えられる。


「保健室」

短く言い切る声。


「行かない」

反射的に答える。


「は?」

「……行かないです」


絶対に、行きたくない。

先生に知られるのも、クラスの人に知られるのも、全部嫌だ。
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