妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
「………………あああ……」

 終わった。
 四つん這いになったまま、私は伸ばしかけた手を下ろし、深く深く項垂れた。

 いくら空腹とはいえ、さすがに他人の靴で踏み潰された串焼きを食べようとは思えない。

 私の全財産が……貴重な栄養源が……。

「大丈夫ですか? すみません、ぶつかってしまって……」

 申し訳なさそうに屈んで声をかけてきたのは、左手に茶色い袋を抱えた端正な顔立ちの男性だった。

 こちらを見て、彼は驚いたようにその目を大きくした。

 長身に纏うのは仕立ての良い上等な濃紺のローブ。
 茶色にたっぷり灰色を混ぜたような美しいサンディ・ブロンド。
 深い海を思わせる紺碧の瞳。

 その青い虹彩に金色の環――通称|《魔力環》が浮かんでいるのを見て、私もまた驚きに目を見張った。

 ――私や妹と同じ魔女なんだ、この人。
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