悪魔な義理弟《ボディーガード》~ヤンキー校最凶犬男子の独占欲が強過ぎる~
◇◇◇





「ねえ、莉子。櫂理にうどん食べられるか聞いてきてくれる?」


正午を迎え、リビングでぼんやりテレビを見ていると、お昼の準備に取り掛かろうとしている母親からそう言われ、私は少し躊躇いがちに返事をした。


朝もお粥はしっかり食べてたし、多分大丈夫だと思うけど、一応確認しようと。二階へ上がり、櫂理君の部屋の扉を軽くノックしてみたけれど、一向に反応がない。

おそるおそる扉を開けると、ベッドから静かな寝息が聞こえてきて、私は物音を立てないように彼の側まで近寄った。


……可愛い。
また幼い櫂理君に戻っている。

先程の暴力的なまでの色気とは裏腹に。今度は長いまつ毛を落とした無垢な寝顔が目前に映り、つい頬が緩んでしまう。

このまま引き返そうとしたけれど、この寝顔をもう少し見ていたくて、私は近くにある椅子に腰を下ろす。


このまま、ずっと”可愛い弟”ならよかったのに……。


心の中でそう呟くと、櫂理君の細い髪に手をそっと伸ばした。


”弟”ならここまで悩むことはないし、さっきみたいに「好き」と言われても全然平気。

さっきの告白だって笑って受け流せたはずだし、家族として迷わず私も「好き」と言えたのに。

いつの間に、心の中はこんなに複雑に絡まってしまったんだろう。


現状維持でこれまでの関係が保たれているけれど、この選択が正しいとは思わない。


”ねえ。

私は、どうしたいの?”



心の片隅にいるもう一人の自分が問い掛けてくる。

でも、やっぱりその先の答えは見つからなくて。
毎度このパターンに嫌気がさしてくるけれど、今ならはっきりと言える。



「櫂理君、大好き」



どうせ届かないと分かっているから、簡単に口に出せる。

これが家族としての愛なのか、女としての恋なのか。
自分でも正体のわからない曖昧な言葉を、こんな時しか伝えられないなんて……。



つくづく私は臆病者だ。



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