黒瀬部長は部下を溺愛したい

CASE:27 だって、気付いてる?



「ん……やぁ、ほんとに、これ……バレちゃう……」
「……しーっ。声、我慢な」

 そう囁く慧の声が、信じられないくらい優しくて甘い。
 そのせいで莉央の理性なんて、どこかへ溶けて消えてしまう。
 そしてまた、深くて長いキス。

「んんっ! ぁ、慧さん……」
「……やばいな……莉央とのキス、クセになる……」
「っ………そんなこと言わないでください……」
「だって、気付いてる?」
「何がですか」
「さっきから俺の足に擦りつけてんの」
「えっ!?」
 
 なにが、だなんて聞けなかった。
 無意識とは言え、夢中になっていたのは事実だから。
 
「すみませんっ……!」
「いいから」
 
 離れようとする莉央を腕の中に閉じ込める。

「ほら、キスして……」
「ん、もう……っ、ん」

 離れたくない気持ちと、バレちゃいそうな緊張感で焦る気持ちがせめぎ合う。
 それでもやっぱりキスしていたい。
 しばらく夢中でお互いの唇を奪い合っていると……。

 ガチャッ、バタン!

「どうやら高木が出て行ったみたいだな」
「ですね」

 そっと押し入れをあけると、部屋は真っ暗で人の気配はなかった。

「おいで、莉央」
「ありがとうございます」

 ようやく胸いっぱいに空気が吸える。
 深呼吸をしてもやっぱりまだ莉央の頬は赤い。

「顔、まだ赤いな」
「慧さんのせいです」
「ごめん。抑えきれなくて……」

 慧は少しだけ眉を下げ、困ったように笑った。

「あの、私少し外歩いてきます」
「俺もちょうど同じこと考えてた」

 ホテルのサンダルに履き替え、静かに部屋を抜け出す。
 夜の海沿いの小道。
 風が気持ちよくて、肌寒いくらいなのに莉央の頬は、まだぽぉっと赤かった。

「……寒くない?」
「はい、大丈夫です……でも……」
「……ん?」
「思い出すたびに、恥ずかしいです……」

 莉央の言葉に、慧はふっと笑ってポケットから手を出す。

「じゃあ……手」

 その手が莉央の手を、やわらかく包み込む。
 繋がれた手がじんわりと温かくて、莉央のドキドキはまた再燃する。

「……これくらいなら平気だろ?」
「…………」

 慧の一挙手一投足に莉央は翻弄されっぱなし。
 当の本人は気付いていないよう。

(何されてもドキドキしちゃう……なんて言えないよ)

 ふわりと頬を撫でる風が心地よい。
 ふたりで夜風に吹かれながら歩くその道はなんてことない散歩道だけど。
 今まででいちばん、心が甘く溶けそうな時間だった。

To be continued
< 27 / 27 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:2

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

推しの妻になりました〜アイドルと契約結婚〜
桐生桜/著

総文字数/27,188

恋愛(その他)28ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
 コンシェルジュ見習いの高階苺依には(たかしなめい)には、パート掛け持ちの母、受験生の弟、高校生の妹……支えるべき家族がいる。  そんな毎日の中、唯一の癒しはアイドルグループ『XENO』のTOMAだった。  ある日、勤務先のホテルで苺依は目を疑う光景に出くわす。  冷たい水を浴びせられている男性……慌ててタオルを持って追いかけると、振り返ったのは、あのTOMAだった。 「……余計なお節介なんだよ」  感動も束の間、TOMAの第一声は冷たい一言だった。  しかもエレベーターの扉が閉まり、気まずい密室に二人きり。  テレビで見せる王子様の笑顔など、どこにもない。  苺依のネームプレートを一瞥したTOMAは、温かいコーヒーを要求した。  そして思いもよらない言葉を告げられる。 「俺の婚約者になれ」  父親から押しつけられる縁談にうんざりしていたTOMAが目をつけたのは、ファンのくせに少しも遠慮しない苺依だった。  苺依はお金のために、その提案を承諾する。  こうして始まった、嘘だらけの夫婦生活。  でも共に過ごすうちに、仮面の裏に隠された「本当のTOMA」が少しずつ見えてきて……。  ニセモノだった婚約者が本物の愛に変わるまでのラブストーリー。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop