御曹司はただの同期のはずだったのに
曖昧な関係。

名前のない関係。

それが、今ここで、はっきりと形を持ってしまった。

公太は少しだけ黙って、私を見つめた。

その目が、探るように揺れる。

そして、小さく息を吐く。

「……そういうことですか」

ぽつりと、言った。

その声には、驚きと、少しの納得が混じっている。

「なるほど」

苦笑するように肩をすくめる。

「じゃあ、仕方ないですね」

軽く言うけれど、完全に割り切れているわけじゃないのは分かる。

それでも、公太はそれ以上何も言わなかった。

「すみませんでした、桐谷さん」

そう言って、一歩下がる。

「また今度、仕事でお願いします」

最後まで、後輩としての礼儀を崩さない。

そのまま、くるりと背を向けて歩き出した。

残されたのは、私と理人。

沈黙が落ちる。

さっきまでの空気とは、まるで違う。
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