これは果たして恋なのか。
第一章 少年と忠告
“あのね蒼。おかあさん、結婚したいと思っているひとがいるの。誠さん、っていうんだけど。”
父と母が別れて二年。当時小学3年生だった俺に、母はそう打ち明けた。
最近、母は休日になるとやけに服や化粧に気を使って出かけることが増えていた。父と別れてからはすっかり仕事人間になっていたというのに。
だからもしかしたらそうなるかもしれないと子供ながら気づいてはいたが、いざ言われるとやはりどきりとした。
──また”父”ができるのか。
母の気持ちが分からなかった。
ぼくの実父と別れるまでずっと辛そうにしていたこと、ぼくの前では明るく振舞おうとして無理した笑顔が、まだ記憶に新しい。
分からなかった。どうして、また同じことになるかもしれないのに配偶者をつくろうとするのか。
でも俺にそれを打ち明けた母の顔はこれほどない程に幸せそうだったのを覚えている。
ぼくは母さんとふたりでも幸せだったよ。母さんはそうじゃないの?
ぼくはやだ。知らない人と一緒に暮らすなんていやだ。母さんはそうじゃないの。母さんは、ぼくとふたりじゃダメだったの──?
口に出そうになった言葉たちは、どれも母を困らせるであろうものだった。言えない。言えるわけがない。
俺はその時どんな顔をしていたのだろうか。母が慌てたように付け足した言葉は、さらに俺を驚かせた。
父と母が別れて二年。当時小学3年生だった俺に、母はそう打ち明けた。
最近、母は休日になるとやけに服や化粧に気を使って出かけることが増えていた。父と別れてからはすっかり仕事人間になっていたというのに。
だからもしかしたらそうなるかもしれないと子供ながら気づいてはいたが、いざ言われるとやはりどきりとした。
──また”父”ができるのか。
母の気持ちが分からなかった。
ぼくの実父と別れるまでずっと辛そうにしていたこと、ぼくの前では明るく振舞おうとして無理した笑顔が、まだ記憶に新しい。
分からなかった。どうして、また同じことになるかもしれないのに配偶者をつくろうとするのか。
でも俺にそれを打ち明けた母の顔はこれほどない程に幸せそうだったのを覚えている。
ぼくは母さんとふたりでも幸せだったよ。母さんはそうじゃないの?
ぼくはやだ。知らない人と一緒に暮らすなんていやだ。母さんはそうじゃないの。母さんは、ぼくとふたりじゃダメだったの──?
口に出そうになった言葉たちは、どれも母を困らせるであろうものだった。言えない。言えるわけがない。
俺はその時どんな顔をしていたのだろうか。母が慌てたように付け足した言葉は、さらに俺を驚かせた。