【原案】 ベスト・イズ・マジック!? 〜平民だ・け・ど、チート級の魔力を持ってるので、とりあえず大会で優勝して貴族たちを黙らせてやろうと思いまーす!〜
この世界・魔法界では、貴族のみ魔力が備わっている。
しかし、時には例外も存在するのだーー。

〜story〜
穢多の村生まれの平民だった主人公のナータ・ラクシル(野々辺千春)*は、3才でえげつない魔力*を確認された。
その結果、7才から魔法学校『ネクスト』に通うことになるが、魔法学校には貴族しか集まっていない。
しかも魔法をうまく操れず、おまけに平民なため個性*も持ち合わせていなかった。
千春はひどいイジメを受けたり、先生から不当な扱いを受けたりする。(穢れのように扱われる)
しかし精神的&物理的にかなり強かった千春は、何事も屈しずに乗り越えていく。
そして中等部進学の時、珍しい外部生のレイン・ニュクス(伯永幸斗)が来る。
幸斗は、まさかの腐れ縁。
両親が作る野菜を貴族の家に届ける役を千春がしていたため、昔からの付き合いがあった。
ちなみに裏ではめちゃくちゃ性格悪いので、千春にとったら迷惑極まりない。(あとムダに顔がよい)

穢多の村…動物を狩ることで暮らし続ける、中世の小さな村ほどの文明しかない村。村人たちの団結力はすさまじく、平和や公平に反する者は粛正対象となる。動物を殺めているため穢れが多いとされ、魔法界で1番差別されている民族だと言われている。
千春や幸斗…本名とは違う、いつも使う名前。この世界の本名は、契約のためだけにある。
えげつない魔力…普通の貴族が100だとすると、千春は3948ぐらい。幸斗は……?
個性…貴族だけにある、外すことができない指輪のようなもの。石をなぞれば、それぞれ特定の能力が超強化される。


入学早々開催されるのは、『マジックバトル・ロイヤル』。
全国各地から集まった優秀な中高生50人から、5泊6日で頂点を競うという大会である。
優勝者には賞金100万ペト*&最高位の紫*を授与される。(ちなみに『ロイヤル』は、今年の開催地の魔法学校『ロイヤル』からで、毎年変わる)
優勝できないであろう中学生は、勝ち抜いた戦いの記録更新すれば、30万ペト授与されるとのこと。
貧乏な家を支えるため、千春は出場を決意するが……中学生はハンデとして、ペアで原則参加。(これから下は中学生ペア=1人とする)
友達どころか話し相手もいない千春は、ある理由のため出場を志す幸斗と(仕方なく)チームを組んだ。

100万ペト…日本円でも100万円。1ペトが1円。
最高位の紫…18才までには位を上げることができ、高ければ高いほど使える魔法が増える。紫になると、ものすごくな魔法が使えるようになる。18才の誕生日時点の位が一生の位。紫の位は、総理大臣などの人々が多い。
魔法学校…『ロイヤル』『コア』『ルミナス』『リリーフ』『ネクスト』がある。


予選を息ぴったりで通過して、いよいよ本戦に。
ネクスト中等部1年代表で、千春たちは出場する。
しかし、男女なのに同部屋&今にも壊れそうな2段ベットの部屋だった。
驚愕しながらも、2人は部屋に荷物を置いて準備を始めた。

第1回戦は、障害物競走。
と言っても、競争というよりは脱出のほうが近い。
対戦ペア、もしくは対戦相手とクジを引き、制作チームと脱出チームに分かれる。
制作チームは、用意してある素材を使って障害物を生成魔法で作り、脱出チームはゴールを目指す。
脱出チームがゴールしたのちに制作チームがコースを走り、タイムが短かったほうが2回戦進出。
脱出不可でギブアップした場合、制作チームがゴールできたら制作チームの勝利。
コースを破壊したら失格になり、制作時間外にコースをいじっても失格となる。(絶対に見つかる魔法がかかっている)
生成魔法には魔力が莫大に必要な上、疲労がかなり溜まりやすい。
一見、脱出チームが有利に見えるが、制作チームはコースを把握しているからWin-Win。
頭脳系の問題の障害物は、生成するのが不可能となる。
2回戦進出の人数は、50名。

対戦ペアは、見るからに制作チームがぴったりな2人だった。
千春と幸斗は運動神経がバツグンなため、脱出チームになることを願っていたけれど、制作チームになってしまった。
生成魔法は魔力の使用量は多いものの、扱うのは1番簡単な魔法である。
幸斗が構造を考えて、千春が生成することになった。
しかし、千春は過去に魔力が暴走したことがある。
それを思い出して、大量の魔力を出すことができなくなってしまったのだ。
すると幸斗がちょっと優しくなって、遠回りで励ました結果、生成を成功させることができた。
そこで千春は、なんで幸斗が生成するのを変わらないで励ましたのかを疑問に思う。
それからは絶好調で、コースを完成させる。(途中の工程で、千春が鋼の素材を素手でちぎるシーンも)
万全な出来でレースがスタートし、見事に勝利を収めた。

翌日の朝、千春が癖で2段ベットから飛び降りてしまい、とうとう壊れる。(幸斗にネチネチ言われる)
本部に問い合わせたものの、しっかりとしたベッドが1つしかなくて、どうしようかと悩みながら準備を始める。
そして、持ってきたキャリーバックから黒猫(千春は白猫)を取り出した。
貴族が1人1匹飼っている使い魔の黒猫*は、本来野心家である。
しかし千春の使い魔のミニュレット(麻呂)は、もともと白かった毛並みに比べ、ほとんど寝ているというおねむさんなのだ。(子猫サイズなのにずっしり)
短足のマンチカンの子猫のような見た目をしていて、めちゃくちゃ愛らしい。(よちよち歩くと、もはや脅威)
ちなみに幸斗の使い魔は、ルーカス(七星)という名前があったりする。(アメリカンショートヘア)
今日は使い魔と共にするらしいが、麻呂を揺さぶり起こしても、背中ペンペンしても起きない……。
必殺のササミをぶら下げたら一瞬で起きた麻呂に、マロたんちょっと太った?とお腹をつまみながら聞き、ササミをくわえながらゔー……とうなられる千春であった。

使い魔の黒猫…7才程度で譲渡される。使い魔は全員猫で、魔力を込めれば認知したニオイのない物を探したり、通常は1cmまでの狭いところを通ったりできる。使い魔のほとんどが黒猫で、白猫は全体の0.00000000000000003%ぐらい。(天文学的数字)たまに白い靴下の使い魔はいる。


第2回戦は、宝探し。
超広い会場内に転がったビー玉を、使い魔の探知を使って探し出すというものである。
魔法でほのかにシャボンの香りがするビー玉は1P、普通のビー玉は5P、ビーズサイズは10P、ジョーカーがスタート時から所持しているビー玉は1万Pという配分。
本物と全く同じ見本のビー玉4種類を最初に配布するので、そこで使い魔に対象物を認知させる。
認知時間が終了したら、必ず見本のビー玉を返却する。(未返却だと失格)
ジョーカーは選手の中から1人指名されるが、本人と審判にしかジョーカーの正体はわからない。
見つけたビー玉は配布される袋に入れ、袋に入り切らなくなったら強制終了。(破損したビー玉は換算なし)
袋に一度入れたら、ビー玉は出せなくなる。(他人の袋を奪うのは禁止)
ジョーカー本人に要求する(間違えたら失格)、もしくは1万Pのビー玉を奪えば、1万Pを獲得できる。
ジョーカーはすぐにビー玉を取り出せるようにしておく。
制限時間が終了したら、ロビーに集まって袋を提出する。
ポイント数が上位35人もしくはペアが、3回戦進出。
ビー玉にはダミーがあって、ダミーは中が空洞になっている。
使い魔は探すだけで、肉眼では撹乱魔法で判断できないので、割って中を確認するしかない。
でもダミーじゃなければ換算なしとなってしまうから、かなりの賭けになってしまう。
つまりビー玉を使い魔の導きで集め、ジョーカーはバレないようにすること。
3回戦進出の人数は、35名。

魔力を込めたり、香りがするビー玉に麻呂がフレーメン反応したりして、準備を進める。(麻呂は風呂嫌い)
しかし、まさかの千春たちがジョーカーになってしまった。
作戦を2人で話し合う。(読者は内容を知らない)
そして始まった試合。
麻呂に見つけてもらうと思いきや……まさかの昼寝!?
本来使い魔は、魔力を込めると仕事モードになって、お腹空いたり寝たりトイレに行ったりしなくなる。(毛玉も吐かなくなる)
でも麻呂は規格外で、吐いたりトイレに行ったりはしなくなるけれど、空腹や眠気はそのまま。
一旦別行動で、七星と幸斗に全てを託すことにした。
ひなたでのんきにヘソ天寝している麻呂と離れたところで、千春は魔法の練習。(かわいいから許すらしい)
すると怪しまれて、超マジメっぽい高校生に身体検査されてしまう。(もちろん女子にやらせていた)
実はビー玉を、麻呂の首輪の石と取り替えていた。
だからいくら千春を取り調べしても、何も出てこないのだ。
その後も、競技中なのにナンパされたりしながら練習する。(千春は無自覚美少女)
そして麻呂がむくりと起き、千春が気が付かないまま、ぽてぽてどこかに向かい始めた。
千春はしばらくして気がつき、すごく慌てて厨房に向かう。
厨房で麻呂が、肉類をほとんど食い尽くしていた。
栄養が吸収されにくいことから、麻呂はかなりの大食い。
猫用のエサじゃ、本当に餓死しそうになるのだ。(毒素は千春の加護で問題なし)
その尻拭いで弁償するのは、もちろん千春である。
お腹いっぱいで寝てしまった麻呂の首根っこをつかんで、本部に謝罪しようと立ち上がったのだった。(その時、近くに1Pのビー玉を見つける)
すると本部前に、幸斗がいた。
どうしたかと話しかけると、別行動を控えた方がいいと言われ、また一緒に行動する。
2mmの狭いところにグイグイ入っていける七星のおかげで、75Pも貯まっていた。
しかしジョーカーのビー玉の場所について言ったら、ビー玉を取られてしまった。
そして、幸斗は姿を消した。
実はそいつは幸都ではなく偽者で、個性で化けていたのだ。(七星も)
本物の幸斗は、七星と一緒に梗塞されていた。(幸斗のビー玉は破損)
千春が幸斗を見つけた時、終了のカウントダウンが始まる。
奪った相手がひっそりと1万Pのビー玉を袋にしまった時、持ちPが0で試合は終了した。
明日から2人は、敗者復活戦に臨むことになる。
ちなみに本日から、コンビニ飯となったのだった。

消灯時間になってもどんよりしている幸斗を励ますように、千春が幸斗の背中をバシンバシン叩くと(幸斗が骨折すると言って怒る)、違和感に気づく。
まさかと思い、半分無理矢理幸斗の上半身を脱がすと、まだ拘束魔法が解除されていなかった。(よく動けたね!?)
お怒り3時間フルコースを提供しながら、千春は複雑な拘束魔法を解いてゆく。(ついでに麻呂はタライの風呂で寝とる)
なぜ自分で拘束魔法を解かなかったのかを聞くと、幸斗は『魔力が足りなかった』と答えた。
なんと幸斗の魔力は、普通の人の半分程度しかなかったのだ。
確かにこの拘束魔法を解くには、魔力を莫大に要する。
生成魔法のときの幸斗の優しさは思い違いだったと思うと、少し胸がジクジク痛む。
気を取り直して、もっと落ち込んでしまった幸斗を励ますように肩を叩くと、とうとう幸斗の肩が脱臼したのだった。(慌てて布を噛ませ、グググ……とはめる)
そして2人は気づく。
そうだ、ベッド壊れたんだった。

ー余談ー
よし、床で毛布広げて寝るか!と思った時、麻呂の存在を完璧に忘れていたことを思い出し、慌ててタライ風呂からすくいあげる。
寝てる時は何しても起きないため、かなりお世話が楽なのだ。(ササミをぶら下げると一瞬で起きるのは例外)
ぶお〜とドライヤーで乾かしても水分が飛ばずに、風呂から出てしばらくは、スベスベもちもちしていたりする。
ふわふわ加減はどこ行ったと思いながら、千春はおもしろ半分麻呂をおっさん座りさせる。
力が入っていないため、ずるーっと崩れてゆきーー。
……うん、餅やん。
小さいみかんを乗せたくなる風貌となったのだった。


次の日2人は、指定された別館のコンサートホールに向かった。
ちなみに麻呂は、昨日の厨房での爆食のおかげで夜中にリバースを繰り返し、お留守番となっている。
着くと、7人ほどが集まっていた。
敗退した人、こんなに少なかったっけ?と首を傾げると、さすがに『ほな〜さいなら☆』はかわいそうな理由で敗退した人のみ選出されるとわかった。(有望なのに向いていない脱出チームになったり、観客の上級お貴族ヤンキーに絡まれてタイムアップだったり)
ちなみに中学ペアは、自分たち含めて2ペアのみ。(高校生が5人)

敗者復活戦は、魔力楽器の演奏となる。
ピアノ、オルガン、キーボードピアノの中から1つを選び、1日の練習期間で披露。
生年月日が早い順で披露し、開催地である魔法学校『ロイヤル』の初等部生徒と教師が1人を投票する。(中学ペアは早い方の誕生日が採用)
中学生は連弾、もしくは片方は歌う。(歌いながら弾くのもOK)
本来魔力楽器は、魔力が通る回路にそって音を出す。
しかし今回の魔力楽器は、回路が通っていない。
そのため放出するだけではなく、自分で魔力を操作しなければならないのだ。
魔力を込める量によって、音の大きさなどは変わる。
1番難しいのはキーボードで、魔力の込め方を変えないと、さまざまな音は出せない。(鉄琴は針でつつくように込めたり、オルガンは平たくして込めたり)
なお、贔屓をなくすため、演奏中は個人認識阻害魔法をかけて誰なのかをわからなくする。(投票はエントリーナンバーで)
1番票が多かった1人が、ファイナル進出決定となる。
この戦い、敗者復活戦だからこそハードルが高いのだ。
手始めとして、ペア関係なく1人1人が演奏することになった。
所要時間はわずか10分で、それまでにコツを掴み1曲弾かなければいけない。
しかしさすが有望株。
次々とコツを掴み、きらきら星や校歌、すごい人は某魔法学校物語のテーマソングの1部分を弾いたりしている。
最後から3番目の千春の番が来て、オルガンを少し練習してみると、単純なものは弾けるようになった。(意外と千春はハイスペック)
千春の選曲は、穢多の村の酒場でよく流れている曲、『実りの歌』。
リズムがよく、明るい曲調のオルガンの音色に、朗らかな千春の歌声が重なる。
試験監督も思わず目を見張る重厚感で、演奏を終えた。
最後に演奏するのは、幸斗。
キーボードを迷いなく選び、爆発的な人気の最中であるアニメソングを、わずか10秒の練習で弾き始める。
さまざまな特殊効果を再現し、なめらかに指を縦横無尽に移動させる様子に、周りは驚愕した。
途中で魔力が切れかかって、音が不安定になってゆく。
区切りの部分で、大きな音で魔力を出し切るように締めくくった。

曲を決めたりしたものの、幸斗の魔力が圧倒的に足りない。
次の日の練習でも、曲の途中で音が途切れてしまうのが続いた。
千春は歌を担当するけれど、誰もいなくなる時間になっても練習を続ける幸斗に、思わず口を挟んでしまう。
最初こそ無視していた幸斗は、質問を止めない千春にブチ切れて、『うるせぇ!!』と怒鳴ってしまった。
夜に千春は、幸斗の記憶を魔法で覗いた。

幸斗は上級貴族の父親に、魔力が少ないことを理解してもらえなかったため、貴族なら当たり前にできることができず、ムチで叩かれ腹を蹴られる。
古くから優秀な家系を教育する魔法学校『ロイヤル』も、成績優秀だったのにも関わらず魔力不足で退学となった。
ゆういつ入学許可を出されたのは、個性的な者を伸ばす『ネクスト』。
父親には見限られ、もうほとんど死亡扱いになっている。
この大会で最高位の紫を勝ち取り、父親を見返したいとのことだった。

千春は大泣きしながら抱きついて幸斗を慰める時、聞かれたくない自分の辛い過去を言いかけてしまった。
そのそぶりで幸斗に過去を見られ、なんで見たのと言いながらも、苦しかったことを吐露する。

酒で酔うと暴力的になる父親が盗みを働き、村の人々に粛正として火あぶり処刑された。
その火を点けたのは自分自身で、憎しみのあまり初めて魔法を使ってしまう。
それが暴走して、村全体の大火事となってしまった。
死亡者や重症者はいなかったものの、誰かの大事な物を壊してしまったと自分を責めている。

ー幸斗に視点変更ー
苦しかったことを思い出して泣いているわけではなく、幸斗のために怒って悲しんで泣いている千春を見て、幸斗は千春への想いを再び確認していた。(言ったら幸斗が怖いから察して)
身分が違いすぎるため、諦めようと自分に言い聞かせる。
泣き疲れて寝てしまった千春を、支給された敷布団に寝かせ、その横顔を眺めていた。

ー千春に視点を戻すー
朝早く起きた2人は、本気で今日の敗者復活戦はどうしようかを考える。
千春が思いつき、作戦をごにょごにょ……。
そして迎えた敗者復活戦。
千春の誕生日は3月30日、幸斗は4月1日だったもので、1番最後になってしまった。(千春は、まさか自分の方が誕生日早かったとは思いもせずビックリ)
1つ前の中学生ペアがものすごく上手く、少し物怖じしてしまう。
幸斗から手を握られ、少し心音が跳ねたものの千春は安心する。
そして、6月の湿気で微妙に餅状態になり、足元で自分のしっぽをくるくる追いかけている麻呂を抱きかかえ、舞台上へ向かった。

千春たちが選んだのは、オルガン。
麻呂を譜面台に載せようとするも、湿気でちょっと不機嫌な麻呂はイヤイヤする。
仕方なく、譜面台に干すようにして麻呂を置き、首根っこを軽く摘んで大人しくさせた。
もちろん周りの目は、『猫を連れて来んなよ』と言いたげだ。
しかし今回は、麻呂の能力がキーパーソンなのでしょうがない。
幸斗と目で頷き、連弾を始める。
精霊への祈りと誓いの曲を弾いた。
連弾では幸斗がソプラノ、千春がアルト。歌では千春がソプラノ、幸斗がアルト。
千春の魔力を幸斗に受け渡しているのは、麻呂だった。
麻呂は魔力の充電池みたいな存在でもあり、夢に出てきた物を召喚することもできる。
幸斗でも千春(と麻呂)のおかげで、音を途切れさせることなく曲を進めることができるのだ。
心地よい音楽で麻呂がうとうとしてしまい、精霊が何匹も召喚される。
幻想的な光景に、生徒たちは目を奪われた。
そして最後は、とうてい人間には出せない魔力を解放し、信じられない重厚感で締めくくった。
票の半数が千春たちに入れられ、ファイナルステージ進出決定!
千春は、音楽で麻呂がうとうとした時、ササミが大量に降ってこなくてよかったとこっそり安堵したのだった。

ー幸斗視点ー
部屋で休んでいると、本部から通達があった。
『野々辺千春の魔力は不公平に値するため、魔力なしでの参加を求める』とのこと。
つまり、ただの嫌がらせである。
幸斗が拒否し続けたものの、大半の選手から苦情が来ているなどと言い本部からウザいぐらい求められる。
とうとう夜には『拒否すると自動的に敗退となり、使い魔の変更も考えなければならなくなる』と伝えられた。
幸斗は千春に、魔力なしでは勝ち目なんてないから、敗退するよう言う。
しかし千春は、魔力なしで出場することを決意した。
母のために、後戻りなどできないそうだ。
麻呂もここ以外で幸せになれるかはわからないからと、ヘソ天寝している麻呂のお腹を撫でながら千春は微笑む。
自分の名誉を汚してでも母のために尽くし、麻呂と離れたくない自分の意思を無視している千春の横顔へ、平手打ちしたいような褒めたらいいのか複雑な感情を、幸斗はぐるぐるさせていた。

ー千春視点に戻るー
第5回戦は、堂々正面ガチンコ勝負。
ルールは簡単、相手を戦闘不能にするか辞退させ、審判が勝利判定を出したら勝利である。
魔法を制御させる杖以外は使っていけない。(回復アイテムは特にNG、ドーピングも完全アウト)
個性の使用は可能、ただし審判や観客を傷つけたり、何かの影響を与えたりするのは反則。
これらもろもろは、審判によって判断される。
反則は強制退場。
準決勝と決勝では、相手が死亡しても構わない。(逆にその試合以外ではNG)
第3回戦と第4回戦では、バーチャルを使用した試験のようなものだった。
弱点を突いてくる架空の人形と対戦し、結果によって合否が決まる。
これらは敗者復活戦と同時に行われたため、敗者復活を適用した人は受けていない。
つまり、弱点をほぼ克服している強者を相手に、千春たちは魔力なしで戦わなければいけないのだ。
エントリーは高校生6人、中学生ペアは2ペア(千春たち込み)。
3回勝てば優勝が決まり、2回勝てば準優勝は確定する。
準優勝は、死亡しても適用される。

最初の敵には、千春が物理攻撃で圧勝する。
準決勝では相手の個性により苦戦しながらも、幸斗の個性を発動し勝利する。
幸斗の個性は相手の魔力を半分吸い取り、大きな竜を造るもの。
相手の魔力の半分では竜を造れず、幸斗は千春の魔力を吸い取った。
その強すぎる竜が、相手の杖を木っ端微塵にする。
相手が失神したことで、決勝進出を確定させた。

決勝進出した中学生ペアは前代未聞なようで、少しの混乱が発生する。
その後告げられたのは、ペアのどちらかを敗退させるため試合を行うということだった。
この試合は回避することもできるけれど、その場合は脱落者を決めなければならないらしい。
決勝戦に負けて生きて帰れた者は少ないため、魔力なしで決勝に臨むのは死にに行くようなもの。
幸斗はその面で行かせないと言うが、千春は母のために……と譲らない。
この時点で記録更新していると言えば、敗者復活を適用したから含まれないと言いくるめられる。
そうしないとお金が貰えないし、幸斗が賞金を譲ってくれると言っても、勝ち目はほとんどない。
何より自分がいなくなっても、悲しむ人がいないと、千春は安心させるような笑みで言った。
すると、幸斗が急に平手打ちをしてきた。
ここに悲しむヤツはいる、なんでわからないんだよと言い、今度は逆に抱きしめてくる。
はっきりと自分の存在を肯定してくれた人は初めてで、千春は耳が熱くなる。
どうしようもなく嬉しくて、どうしようもなく恥ずかしくて。
どうしようもなく、鼓動がうるさい。
涙が止まり、腫れぼったい目元を幸斗に合わせると、覚悟が決まったような顔をしていた。
行きたいのか行きたくないのかを聞き、それを肯定してくれるような。
千春は幸斗へ、行きたいと答えた。
それを尊重してくれて、目を拭け冷やせと小言を言われ、少し安心する。
控え室へのアナウンスが響き、幸斗に見送りしてもらう。
そして、生きて帰ってこい、と言われる。
控え室に入ってから千春は、自分の幸斗への想いを噛み締めていた。

そして決勝戦。
相手の個性は、空間の一部をブラックホールのようにしてしまうものだった。
観客は秒で終わるかと思いきや……普通に千春は回避する。
しかし防戦一方で攻撃できない、と相手が鼻で笑うと……四方八方から矢が飛んでくる!?
実は麻呂、夢を自分でコントロールさせることができる。
それで弓の夢を見て、バシュンバシュン飛ばしているのだ。
千春が指示したのはもちろんだけれど、気が向いたらの話だったから千春は少し感激した。
しかし途中で、矢がプツリと止んでしまう。
たぶん麻呂が『腹へった』とむくりと起き、ぽてぽて歩いて食べ物を貢いでいるんだろうけど、千春はそれどころではない。
幸い相手はまだ弓に警戒しているようだから、急接近を図る。
しかし、千春に少し隙ができたところで、相手がブラックホールを発動した。
吸い込まれ、なんとか穴の淵を掴んだけれど、吸い込まれる力が強すぎる。
もうダメだと思った時、奇跡が起こる。
相手の指輪が負荷に耐えきれず、粉々に砕け散ったのだ。
吸い込まれる穴からただの穴に変わり、千春は即座に這い出る。
個性がなければ何もできなかったらしく、うろたえて小さな火玉を出す相手に、千春は手刀で意識を失わせた。
勝敗が決まり、審判が息を吸い込む。
そして大声で宣言されたのは……。
相手の勝利だった。

確かにルールには、審判の判断で勝敗が決まると書かれていた。
周りの観客は、その結果に全面的に賛成しているようだ。
千春は呆然として、そして崩れ落ちた。
どちらが勝ったかなど、今の状態では相手だと思ってしまえる。
この大会で優勝したはずの自分でも、貴族には敵わない。
審判はすでにいなくなっており、観客には帰れ平民と侮辱される。
せめてこの声をあげてから退場したいと思った千春は、大きく息を吸い込んだ。
『私が勝ったよ!!』
すると、いきなり辺りが静まり、気楽な声で『はい静粛に〜』と言う若い男性が出てきた。
その人はなんと『ネクスト』の校長、および全魔法学校の最高責任者と名乗ったのだ。
校長は千春の勝利を証明し、権力で無理矢理結果を覆す。
そして校長の手渡しで、紫の肩紐と賞金100万ペトを約束する契約書を貰うことができた。
観客はブーイングしたくても、校長の魔法で音を出すことができない。
ものすごく静かな表彰式は、簡潔に滞りなく(?)終了した。

控え室から出ると、幸斗に抱きくすめられた。
無言で千春の頭に顔を埋め、ぐりぐりしてくる。
心から安堵しているのがわかる仕草に、千春も肩にぐりぐり返す。
しばらくして体を離し、少し笑って部屋に戻った。
布団を畳んだり洗面台を片付けたり、厨房の冷凍庫でサンマ咥えてガタガタブルブルしていた麻呂を風呂に入れたりする。(千春の加護のおかげで死にはしない)
麻呂があったまるまで、麻呂が湯に浸かっている持参タライ風呂を机の上に置き、幸斗と待つことにした。(風呂嫌いでも、寒いから大人しく浸かってゔーと唸っている)
外を眺めている幸斗の横顔が愛おしく、思わず口を滑らせてしまう。
幸斗は聞き逃さず、好きって言ったか?と距離を詰めてくる。
真っ赤になった顔で千春は降参して肯定し、抱きしめられた。
耳元で好きだと言われ、思わず変な声が出てしまう。
わかってるくせに、どうした?と何度も聞かれ、お腹をぽすぽす、ではなくドスドス軽く殴る。
痛てぇと丸まった幸斗の身体を上げさせ、額を合わせる。
そして、口付けを交わした。

元の学校生活に戻ると、校長に呼び出される。
内容は、優勝させてやったんだから条件を呑めとのことだった。
『次代の全魔法学校の最高責任者になる気はないか?』

〜長かったけど終わり〜
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