愛なんて要らないから


「ここはね、お酒はもちろんだけど、料理もめちゃくちゃ美味しいんだよ」

 二つ隣の席に座っていた男の人が話しかけてきた。

 常連さん、なのかな。初対面なのにすごく気さくな人で、顔も、まあ……イケメン。

 スーツ姿でワイシャツを着崩しているからか、色気がすごくて、こうやって女性に話しかけることにも慣れているような感じがした。


「そうなんだ。何がおすすめですか?」

「ん〜、メニューに書いてある料理は基本どれも美味しいけど、俺はシンプルにバタピーが好き」

「バタピー、ですか?」

 テーブルの上にあるメニュー表を見ても、「バタピー」という文字はどこにも書いていない。


「食べたら分かるよ。陽ちゃん、バタピーお願い」

「はいはい、かしこまりました」

 メニュー表にはないのに、普通に注文をする男の人と、それをいつものことのように笑って注文を受けるバーテンダーさん。

 二人の距離感は、ただのお客と店員というより、もっと距離の近い、友達同士のような感じがした。



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