愛なんて要らないから


 皓太さんを傷付けたい訳じゃない。でも、彼の気持ちに応えられないのも本当のこと。

 その時点でどうしたって傷つけてしまう。


 だって、私には悠だけだから。

 この先の人生を悠以外の他の誰かと歩んでいく、なんて考えたくないから……。

 だからこれでよかった、そう自分に言い聞かせたけど、皓太さんがみせた切な気な顔が頭から離れなかった。


 次の日の朝、静かに病室の扉が開いて、中に入ってきたのは少し大きな荷物を持ったお母さん。

「明日の喪服とか持ってきたよ」

「ありがとう」

「美羽の怪我といい、ご友人も事故にって、なんだか悲しいことが続くのね」

「……そうだね」

 何も知らないお母さん。その事故に遭った人は、私が結婚を考えていた人だなんて全く想像もしていないだろうな。

 お母さんには本当のことを言った方がいいのか迷ったけど、お母さんと親しく話していた皓太さんの顔がチラついてしまって言い出せなかった。


 お母さんは仕事ですぐに帰っていき、病室の中で一人になると、私は昨日と同じように窓の外の空をみていた。

 ただ、昨日と違うのは時計を気にしていたこと。


 何度か病室の扉は開いたけれど、看護師さんが様子を見にくるだけで、この日は皓太さんが来ることはなかった。

 扉が開くたびに皓太さんかと思って緊張して過ごす一日は、昨日よりもなんとなく長く感じたけど、皓太さんと顔を合わせなかったことに安心している自分もいた。


 そうして迎えた悠のお葬式の日。

 看護師の人に手伝ってもらい、用意してもらった喪服に袖を通して準備をしていると、病室の扉が開く音がした。



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