詩を愛するお飾り皇后の逆転寵愛〜無愛想な皇帝陛下が恋した人は私でした〜
第七話 呉妃の陰謀
呉花花は焦っていた。
皇后である桂麗の部屋で、武徳が夜を明かしたと聞いたからだ。
もちろん、一度だけだったら、たまたま休息に来ただけかもしれない。
だが、今のところ五日続けて通っており、しかも必ず朝まで過ごしているという。
「ええいっ、忌々しいっ!」
花花は茶器を、近くにいた女官に投げつけた。
女官が「ひいっ」と情けない声をあげて避けたため、パリーンと派手な音を立てて茶器が割れた。
「何避けているのっ」
「も、申し訳ありませんっ」
「お前まで私の神経を逆なでにするのね! 今すぐ罰をくれてやるわ」
「お、お許しをっ」
「うるさい、裸でつるし上げて百叩きよっ」
花花の憂さ晴らしはもっぱら、女官いじめだった。
しかしあの皇后が何度も注意をしてくるのが鬱陶しくて、しばらくは大人しくしていた。
だが、もう我慢の限界だ。
(馬鹿にして! 陛下も陛下よ! 何で一度も訪れないの。それでも皇帝なの!)
むしゃくしゃしたときは、誰かの苦しむ様を見るのが一番だ。
「呉妃様、どうか落ち着かれませ」
白髪の女官が、慌てて仲裁に入った。彼女は花花の乳母で、実家から連れてきた腹心でもあった。
「何よっ、止めないで。いいじゃない、久しぶりなのよ」
まずは頬を思いきり叩いてやる、と、震える女官の胸ぐらを掴んだ。
「まぁまぁ。元を正せば、呉妃様をご不快にさせているのは、この者ではなく李后様……でございましょう?」
女官に向かって振り上げた手を、花花はゆっくりと下ろした。
その言葉は、まさに図星だったからだ。
「お前、少し部屋を出ていなさい。呉妃様と二人きりにさせてね」
「は、はい」
女官は、安堵したような顔で、そそくさと部屋を出て行った。
「なんなの? 人払いなんて……」
「恐ろしい噂を聞いたからですわ。呉妃様、どうかお耳を……」
乳母のいう通りに、呉妃は耳を貸した。
そして、信じがたいことを聞いた。
「それは本当なの?」
「間違いございません。李后様付きの、一番若い女官をこっそり買収しておりまして」
皇后には、丹という実家から連れてきた女官がいる。彼女は忠誠心が篤い。
だが、家が困窮している年若の女官は、金目のものを渡したらすぐになびいたという。
「証拠はすでに回収させております」
「陛下に知れたら、一大事ね。あの小賢しい李桂麗は廃后よ」
「ええ。むしろ、李后様が陛下の寵愛を受け始めたのは好都合。廃された後、呉妃様が傷心の陛下をお慰めすれば……」
「ほほほ、今日は実にめでたい日になるわね!」
ふっふっふっ、あはははと、どちらからともなく、花花と乳母は笑い合った。
皇后である桂麗の部屋で、武徳が夜を明かしたと聞いたからだ。
もちろん、一度だけだったら、たまたま休息に来ただけかもしれない。
だが、今のところ五日続けて通っており、しかも必ず朝まで過ごしているという。
「ええいっ、忌々しいっ!」
花花は茶器を、近くにいた女官に投げつけた。
女官が「ひいっ」と情けない声をあげて避けたため、パリーンと派手な音を立てて茶器が割れた。
「何避けているのっ」
「も、申し訳ありませんっ」
「お前まで私の神経を逆なでにするのね! 今すぐ罰をくれてやるわ」
「お、お許しをっ」
「うるさい、裸でつるし上げて百叩きよっ」
花花の憂さ晴らしはもっぱら、女官いじめだった。
しかしあの皇后が何度も注意をしてくるのが鬱陶しくて、しばらくは大人しくしていた。
だが、もう我慢の限界だ。
(馬鹿にして! 陛下も陛下よ! 何で一度も訪れないの。それでも皇帝なの!)
むしゃくしゃしたときは、誰かの苦しむ様を見るのが一番だ。
「呉妃様、どうか落ち着かれませ」
白髪の女官が、慌てて仲裁に入った。彼女は花花の乳母で、実家から連れてきた腹心でもあった。
「何よっ、止めないで。いいじゃない、久しぶりなのよ」
まずは頬を思いきり叩いてやる、と、震える女官の胸ぐらを掴んだ。
「まぁまぁ。元を正せば、呉妃様をご不快にさせているのは、この者ではなく李后様……でございましょう?」
女官に向かって振り上げた手を、花花はゆっくりと下ろした。
その言葉は、まさに図星だったからだ。
「お前、少し部屋を出ていなさい。呉妃様と二人きりにさせてね」
「は、はい」
女官は、安堵したような顔で、そそくさと部屋を出て行った。
「なんなの? 人払いなんて……」
「恐ろしい噂を聞いたからですわ。呉妃様、どうかお耳を……」
乳母のいう通りに、呉妃は耳を貸した。
そして、信じがたいことを聞いた。
「それは本当なの?」
「間違いございません。李后様付きの、一番若い女官をこっそり買収しておりまして」
皇后には、丹という実家から連れてきた女官がいる。彼女は忠誠心が篤い。
だが、家が困窮している年若の女官は、金目のものを渡したらすぐになびいたという。
「証拠はすでに回収させております」
「陛下に知れたら、一大事ね。あの小賢しい李桂麗は廃后よ」
「ええ。むしろ、李后様が陛下の寵愛を受け始めたのは好都合。廃された後、呉妃様が傷心の陛下をお慰めすれば……」
「ほほほ、今日は実にめでたい日になるわね!」
ふっふっふっ、あはははと、どちらからともなく、花花と乳母は笑い合った。