婚約者の浮気が発覚したので、街の中心で「誰か私を貰って!」と叫んだら大物が釣れました
第12話 ちょっと派手な親子喧嘩
テオドラがリオネルの執務室を訪れると、机に向かって書類に目を通すリオネルがいた。
いつものように淡々と自分の仕事に向き合っているが、雰囲気はいつもとは違って見えた。
「いい事でもあったのか?」
「えぇ。喝を入れられました」
そう言う割には嬉しそうに微笑んでいる。
(檄をもらって喜ぶって事は……嬢ちゃんか)
テオドラは持っていた書類を机に置くと、ソファーに腰掛けた。
リオネルと言う男は、愛想がよく掴みどころがない男だ。長年一緒にいる俺でも、未だに掴めない所があるのだから筋金入りだ。
王太子と言う窮屈な立場で、自分の意思なんてある様でない世界で生きてきたコイツは、常に張り付いたような笑顔を浮かべ、退屈な日常を埋めるように遊び回っていた。
仮にも王太子なんだから、態度を改めろと何度も苦言を呈した。だが、俺の言葉はコイツには届かなった。
このままでは、嗜好品として隣国の王女の元へ行かざるを得なくなる。何とかして阻止したいが、当の本人がそれを受け入れてしまっているのでどうする事も出来ない。
──そう、俺も諦めかけた。
『探して欲しい娘がいる』
初めてだった。コイツが心の底から楽しそうに微笑んでいるのを見たのは。
そうして見つけたのが、ツェスカだった。
王太子相手にも毒を吐き、牙を見せてくる。そんな女、見た事がない。リオネルじゃなくても、興味が湧く。
彼女と関わりを持つようになって、張り付いていた仮面は剥がれ、自然に笑えるようになっていた。
彼女なら、今のリオネルを救ってくれると思っていた。確信は無かったが、長年の勘だ。
(俺の直感は当たってたな)
しみじみ思い出に浸っていると
「テオドラ」
「なんだ?」
神妙な面持ちのリオネルに声をかけられた。その表情にゴクッと息を飲んだ。
「政権奪取……しちゃおうかな。って思ってます」
「は?」
弾けるような笑顔で言われ、理解する前に困惑で頭が持っていかれた。
「正直、国や政権とかどうでもいいんですが、一番手っ取り早くこの国に残れる方法を取ります」
迷いや躊躇いなんて微塵も感じさせない強くて鋭い眼。こんな眼、見た事がない。
「……ふはっ」
嬉しさに動かされ、反射的に微笑んだ。
誰が何を言っても聞かなかった頑固者を、あの子はこうも易々と心変わりさせちまうのか……期待以上だ。
「参ったな……これは夢か?」
「残念ながら、現実です。なに、ちょっと派手な親子喧嘩ですよ」
ちょっと派手ってお前……そう口から出そうになったが、グッと飲み込んだ。
「……今更『冗談でした』は通用しないぞ?」
「えぇ。私の心は決まってます」
「そうか」
はっきりと口にしたその顔は、眩しいほど輝いていた。
(いい顔してるじゃないか)
一息間を置き、ニヤッと口角を吊り上げ、リオネルの肩に手を回した。
「よしっ、やるか!」
嬉しそうに宣言した。
「いいんですか?団長殿が国を脅かそうとしている者の片棒を担いだりして」
ヘラつきながら、俺の本心を知ろうとしてくる。逃げ道を作ろうとしてくれているのだろう。……余計なお節介だ。
「何言ってんだ。俺は団長としてじゃなくて、親友として言ったんだよ」
きっと最初で最後の親子喧嘩。結果はどうあれ、コイツを独りにはしない。
まあ、いざとなれば団長の任なんて捨てる覚悟はできてる。
「俺はお前を王太子ではなく友として見ていたが、お前は違うのか?」
聞かなくても分かっているが、あえて口にして覚悟と真意をリオネルの身に叩きこんだ方がいい。
「……狡い人だ。そんな口説き文句言われたら断れないでしょう?」
「惚れ直しただろう?」
「えぇ」
「「ぷっ…あははは!」」
その場に二人の笑い声が響いた。
「折角だし、カッコよく乗り込んでみるか」
「そうですね。おあつらえ向きに隣国の使者が来ているみたいですよ?」
不敵な笑みをうかべながら言うリオネルに「ふはっ」と思わず吹き出した。
「へぇ?それは随分とタイミングがいいよなぁ?」
笑顔で見下ろしながら聞き返すが、リオネルは目を細めて微笑んでいた。
コイツは節操は悪いが、頭の回転が早く決断が早い。どうやって隣国の者を呼び寄せたかは知らないが、こうなる事を既に見通していたのだろう。
ずる賢いと言うか、抜け目がない。こういう奴は、敵に回したくないタイプだ。
「何しているんです?行きますよ」
「あぁ」
──行こう。お前が生きたいと思える未来へ。
いつものように淡々と自分の仕事に向き合っているが、雰囲気はいつもとは違って見えた。
「いい事でもあったのか?」
「えぇ。喝を入れられました」
そう言う割には嬉しそうに微笑んでいる。
(檄をもらって喜ぶって事は……嬢ちゃんか)
テオドラは持っていた書類を机に置くと、ソファーに腰掛けた。
リオネルと言う男は、愛想がよく掴みどころがない男だ。長年一緒にいる俺でも、未だに掴めない所があるのだから筋金入りだ。
王太子と言う窮屈な立場で、自分の意思なんてある様でない世界で生きてきたコイツは、常に張り付いたような笑顔を浮かべ、退屈な日常を埋めるように遊び回っていた。
仮にも王太子なんだから、態度を改めろと何度も苦言を呈した。だが、俺の言葉はコイツには届かなった。
このままでは、嗜好品として隣国の王女の元へ行かざるを得なくなる。何とかして阻止したいが、当の本人がそれを受け入れてしまっているのでどうする事も出来ない。
──そう、俺も諦めかけた。
『探して欲しい娘がいる』
初めてだった。コイツが心の底から楽しそうに微笑んでいるのを見たのは。
そうして見つけたのが、ツェスカだった。
王太子相手にも毒を吐き、牙を見せてくる。そんな女、見た事がない。リオネルじゃなくても、興味が湧く。
彼女と関わりを持つようになって、張り付いていた仮面は剥がれ、自然に笑えるようになっていた。
彼女なら、今のリオネルを救ってくれると思っていた。確信は無かったが、長年の勘だ。
(俺の直感は当たってたな)
しみじみ思い出に浸っていると
「テオドラ」
「なんだ?」
神妙な面持ちのリオネルに声をかけられた。その表情にゴクッと息を飲んだ。
「政権奪取……しちゃおうかな。って思ってます」
「は?」
弾けるような笑顔で言われ、理解する前に困惑で頭が持っていかれた。
「正直、国や政権とかどうでもいいんですが、一番手っ取り早くこの国に残れる方法を取ります」
迷いや躊躇いなんて微塵も感じさせない強くて鋭い眼。こんな眼、見た事がない。
「……ふはっ」
嬉しさに動かされ、反射的に微笑んだ。
誰が何を言っても聞かなかった頑固者を、あの子はこうも易々と心変わりさせちまうのか……期待以上だ。
「参ったな……これは夢か?」
「残念ながら、現実です。なに、ちょっと派手な親子喧嘩ですよ」
ちょっと派手ってお前……そう口から出そうになったが、グッと飲み込んだ。
「……今更『冗談でした』は通用しないぞ?」
「えぇ。私の心は決まってます」
「そうか」
はっきりと口にしたその顔は、眩しいほど輝いていた。
(いい顔してるじゃないか)
一息間を置き、ニヤッと口角を吊り上げ、リオネルの肩に手を回した。
「よしっ、やるか!」
嬉しそうに宣言した。
「いいんですか?団長殿が国を脅かそうとしている者の片棒を担いだりして」
ヘラつきながら、俺の本心を知ろうとしてくる。逃げ道を作ろうとしてくれているのだろう。……余計なお節介だ。
「何言ってんだ。俺は団長としてじゃなくて、親友として言ったんだよ」
きっと最初で最後の親子喧嘩。結果はどうあれ、コイツを独りにはしない。
まあ、いざとなれば団長の任なんて捨てる覚悟はできてる。
「俺はお前を王太子ではなく友として見ていたが、お前は違うのか?」
聞かなくても分かっているが、あえて口にして覚悟と真意をリオネルの身に叩きこんだ方がいい。
「……狡い人だ。そんな口説き文句言われたら断れないでしょう?」
「惚れ直しただろう?」
「えぇ」
「「ぷっ…あははは!」」
その場に二人の笑い声が響いた。
「折角だし、カッコよく乗り込んでみるか」
「そうですね。おあつらえ向きに隣国の使者が来ているみたいですよ?」
不敵な笑みをうかべながら言うリオネルに「ふはっ」と思わず吹き出した。
「へぇ?それは随分とタイミングがいいよなぁ?」
笑顔で見下ろしながら聞き返すが、リオネルは目を細めて微笑んでいた。
コイツは節操は悪いが、頭の回転が早く決断が早い。どうやって隣国の者を呼び寄せたかは知らないが、こうなる事を既に見通していたのだろう。
ずる賢いと言うか、抜け目がない。こういう奴は、敵に回したくないタイプだ。
「何しているんです?行きますよ」
「あぁ」
──行こう。お前が生きたいと思える未来へ。